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「政府資金は一切受け取らない」富裕層の寄付が支える国際人権監視団体の矜持…トランプ政権による国際秩序の混乱で挑むミッションとは

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厚労省で審議会が設置されると、具体的な制度改正を提言するなどキャンペーンを続け、2016年の児童福祉法改正(すべての子どもを養子縁組と里親を含む家庭で育てることを国や自治体の方針として定めた)につなげた。

他にも、LGBT平等法の制定、長期間勾留することで被疑者や被告人に自白を迫る「人質司法」問題の解決、外国籍の子どもたちの教育アクセス改善など、テーマは多岐にわたる。

国会議員ら政策立案者に法制度改正を提言する(写真:HRW) 

報告書のテーマ選定は、人権侵害の深刻度が高いこと、他の団体があまり扱わず、HRWに専門性があることのほか、政府が審議会を立ち上げたタイミングなど、影響を与えられる可能性の度合いも重要視される。

「どういう問題が起きているのかというエビデンスを示して国に説明するだけでなく、世論を盛り上げ、ロビーイング活動によって国会議員らから政府に働きかけてもらっている。利害関係者間の折り合いをつけてもらうことでなんとか政策を実現できることが多い」(土井代表)

政府系の資金援助は一切受け取らない

時には、国際社会における日本政府の立場も提言する。

直近では、2024年11月に国際刑事裁判所(ICC)が、ガザでの戦争犯罪の疑いでイスラエルのネタニヤフ首相の逮捕状を発布すると、トランプ大統領はICC職員の資産凍結と入国禁止を認める大統領令を発布。これを受けて、HRWは日本政府に対して、アメリカの制裁を批判しICCの独立性を守るよう要請している。

土井代表は「政府が国際人権法上の義務に従っていない場合には、それを批判して改善するようにプレッシャーをかけることが私たちのミッション」と話す。

HRWの特徴は、こうした政府批判の手を緩めないため、政府や政府系団体の資金援助を一切受け取らない点にもある。

民間からの寄付のみで活動を続けるため、日本では、東京事務所のメンバーの半数ほどが資金調達に奔走している。

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