「税収上振れ」で財政は健全化するはずだが、「巨額の補正予算」を繰り越す”悪弊”が「2026年度プライマリーバランス黒字化」を絵空事にする

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2024年度のプライマリーバランスは、前回1月試算では17.9兆円の赤字と見込んでいたが、今回8月試算では7.4兆円の赤字とほぼ確定的にいえる金額が示された。

その2024年度からみてどれほど税収が増え、どれほど歳出が増えるかが、2025年度や2026年度の収支に影響してくる。

たしかに、2025年度も2026年度も、前回1月試算よりもさらなる税収の上振れがあると見込まれていて、各年度ともに1.6兆円という試算結果となっている。これが、前述したように、プライマリーバランスの改善に貢献しているようである。

プライマリーバランス黒字化の「未達成」が確定

ただ、やはり気をつけなければならないのは、大型の補正予算である。補正予算が厄介なのは、年度も残り3カ月しかないような時期に年度末までにこなしきれないほどの巨額の歳出予算を計上することである。

当年度の補正予算として当年度内に使い切るということなら、当年度の財政収支を悪化させるだけで、翌年度には影響しない。ところが、コロナ禍で悪弊となった巨額の補正予算は、当年度内には使い切れず翌年度に繰り越すことを前提として歳出予算を計上している。

この悪弊を2025年度も繰り返すと、中長期試算では黒字化するといっている2026年度において、2025年度補正予算で計上して繰り越す歳出予算が収支を悪化しかねない。そうなれば、今回8月試算で2026年度にプライマリーバランスの黒字化が実現するといっていたことは絵空事になってしまう。

2024年度の補正予算は、「前年度を上回る規模」と早々に宣言した石破首相が、「有言実行」してしまったために、2025年度のプライマリーバランスの黒字化という財政健全化目標の達成は絶望的となった。

今回8月試算は、2025年度に達成できないことを決定づける試算結果でもある。衆議院でも参議院でも過半数を持たない状態になった少数与党の石破内閣は、今後予算編成にどこまで影響力を持ち続けられるだろうか。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶応義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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