さらに、なんと山陰にして唯一の私鉄まで走っている。北松江線と大社線からなる一畑電車だ。一畑電車は大正時代に一畑薬師への参詣路線として開業した。いまでは出雲大社へのアクセス路線という意味合いが強くなっているが、当時は出雲大社の近くまで国鉄の大社線という盲腸線が通っていたのだ。
一畑電車が大社線を開業させるのは昭和に入ってから。それから大社線が廃止される1990年まで実に60年間にわたり、出雲大社には2つの鉄道路線が通じていた。さすが、国譲り神話の出雲大社である。
山陰で唯一の私鉄が走る
一畑電車のいわば本線格は、松江しんじ湖温泉駅と電鉄出雲市駅を結ぶ北松江線だ。
途中には雲州平田という拠点を持ち、ほぼ一貫して宍道湖の北側をぐるりと走る。そこでは車窓から宍道湖の眺めを楽しめるし、タイミングがあえば宍道湖名物のシジミ漁も見ることが可能だ。なかなか悪くない眺望である。
松江側のターミナル・松江しんじ湖温泉駅は、JR松江駅とはやや離れてはいるものの松江城という現存天守を持つ名城に近く、つまりは近世以来の中心地。そこに近接した場所にターミナルを設けているあたり、山陰にあっても私鉄の存在感はなかなかに大きい。

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