国内生損保、下期は運用多様化が加速 日米低金利で利ザヤ確保に苦心
今年6─7月には2.3─2.4%あった10年米債金利<US10YT=RR>は米利上げ観測が遠のくなか、2%そこそこに低下。一方、利上げが実施されれば米国債の利回りは上昇する見通しだが、同時に米短期金利に連動するヘッジコストも上昇する。
富国生命・財務企画部長の渡部毅彦氏は「12月の米利上げを予想しているが、ヘッジコストはそれほど上昇しないとみており、利回りで十分賄える見通し」と話す。米国債は流動性が高く、10年債で2%前半の利回りがあれば必要なリターンが確保できるという。
一方、明治安田生命は、ヘッジ付き外債は円債との比較で妙味が乏しいとして、残高は減少させる見通し。為替・金利水準に応じてオープン外債を積み増す方針だ。
これまでメーンだった米国債への投資方針は、各社でまちまちとなっている。
円債はさらに人気低下
一方、日本国債など円債は、ますます人気が低下。依然としてALM(資産と負債の総合管理)の中心とはいえ、長引く低金利と流動性の低下で、償還分は再投資しないというバイサイドも少なくない。
12社中、円債投資は横ばいもしくは減少の計画がほとんどで、償還分さえも投資しないという生損保もある。10年債利回り<JP10YTN=JBTC>で0.3%台という低水準では、保険商品など負債が求めるリターンに見合わないという。
日本生命は従来から国内債券・ヘッジ付外債などの円金利資産を7割、円金利以外の運用資産を3割という大枠を維持してきた。しかし、「今の円金利レベルで、ALMとマッチングさせることは難しい」(財務企画部長の佐藤和夫氏)として、円金利以外の運用資産を増やし、ほぼ半々の割合とする予定だ。
大同生命保険は、上期の国内債券投資は200億円の減少。下期については、上期同様に「新規投資を償還分以下に抑える方針」(運用企画部長の寅井徹氏)だという。
日本証券業協会が発表する公社債投資家別売買高(除く短期証券)では、9月まで3カ月間連続で、外国人投資家が最大の買い越し主体となった。額は計6.6兆円。その間、生損保の買い越し額は9477億円。日本株市場だけでなく円債市場でも外国人の存在感が今後ますます大きくなりそうだ。
(伊賀大記 編集:田巻一彦)
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