「孫正義」側近、幹部、ライバルが明かす正体

世界進出開始から3年、周囲が見た実像とは

場所や時間は自由自在、とにかく怒る

寺尾洋幸 ソフトバンク執行役員 旧ウィルコム執行役員
大みそか、自宅で紅白歌合戦を観ているときに、孫社長からメールが届いた。「ウィルコムの売り上げは、なんで今日の目標に届いていないんだ!」。慌ててメールを返したら、「年明けの会議で対策を報告しろ」と。トップが大みそかまで正確に数字を把握しているとは、ソフトバンクの経営スピードに驚いた。

イルッカ・パーナネン スーパーセルCEO
さまざまな業種の会社に投資し、各事業をとても深く知っている。孫社長とは戦略について話したり、ブレインストーミングもする。電話で話すこともあるけど、メールはすごくマメにやりとりがある。24時間、いつでも連絡すると即メールが飛んでくる。あれは本当にすごい(笑)。

ジェイミー・ジョーンズ スプリント 営業担当責任者
マサはとても情熱的で、情熱は伝染すると思っている。彼はスプリントの業績を上げるために真摯にコメントしてきた。受け止める側にもよるだろうが、どんな言葉で言われたとしても、僕はパーソナルアタックとして受け止めたことはないよ。
ヤフー幹部
孫さんは、気づいたことがあれば深夜でも早朝でもお構いなしに電話で注文をつけてくる。あまりに電話が多かったので、携帯をカバンの中に入れて、出ないようにしていたくらいでね。
ネット企業社長
孫さんはとにかく怒る。グループ会社の社長が言っていた。まずはメールで怒られる。そのあとに電話で怒られる。最後は結局、呼び出されて怒られるらしい(笑)。

 

孫社長は一体、いつ寝ているのだろうか。スピード感を表す電話、メールのエピソードの数々だ。人型ロボット「ペッパー」の開発中には「アイデアを思いついたので、午前2時にエンジニアに電話をかけて起こしまくった」などと自ら語っていた。

かつて孫社長の秘書を5年半務めた大槻利樹・アイティメディア社長は「孫社長に愛されることは、うれしいこと。だけど、本当につらいことでもあるんです」と笑う。寺尾氏やスプリント幹部のエピソードは、孫社長と共に仕事をする上での「つらいこと」の代表例なのだろう。

孫社長も本当はしんどい?

ライバル企業トップはどう評価しているか

KDDI 田中孝司社長
孫さんは天才だ。僕はそうじゃないから、ちゃんとやらなきゃいかんと思っているわけ。ソフトバンクのように、既存の3Gのユーザーを犠牲にして、LTEの電波を吹くといったことは、われわれはできない。大阪の実家は商売をしているが、お客さんを裏切るとろくなことがないですよ。ソフトバンクがリスクを取って買収をしているのはすごい。でも、僕たちは生き方が違う。

通信会社社長
彼は根っからの商売人だろう。いつでも自分の会社の取引が広がることを積極的にやっている。もともとそうだが、手掛けてきたビジネスをみると、商社的な形というか、研究開発をするなど、自分の手で、一から事業を作っていくタイプではない。

通信会社社長
孫社長に「社長は長くやるんですか?僕なんかすぐ辞めたいけど」なんて言われたことがある。本当に辞めたいと思っているのかどうかはよくわからないが。マスコミの前に出ているときはそれなりにちゃんとされているが、普段は本当にお疲れですよ。

 

「生き方が違う」と語るKDDI田中社長だが、長期のビジネスモデル構築を重視し、技術、マーケティングに詳しいなど、孫社長との共通点は多い(撮影:梅谷秀司)

KDDI田中社長の発言は、iPhone5において高速通信のLTEが本格化した2012年11月のもの。田中社長が標榜するKDDIのイメージ目標は「革新的かつ顧客志向」。また、同社の企業理念には「動機善なりや、私心なかりしか」(前身であるDDIの創業者、稲森和夫京セラ名誉会長によるもの)とある。革新的だが企業志向とも言えるソフトバンクの当時の戦略は、こうした理念を持つKDDIにとって違和感があったようだ。

また、いつでも強気のイメージがある孫社長だが、ライバル会社の社長にふと「辞めたい」とこぼすあたり、経営トップ同士しか理解することができない、弱気な一面もあるのかもしれない。

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