「孫正義」側近、幹部、ライバルが明かす正体 世界進出開始から3年、周囲が見た実像とは

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リーダーシップについて、周囲の印象は?

林要 元ペッパー開発リーダー
(後継者育成機関の)ソフトバンクアカデミアでは、孫社長はいつも「カピカピになれ」と話している。トマトは乾燥したところでよく育つからだと。ペッパーの開発途中では、「お前の情熱が足りないから、プロジェクトが動かないんだ」と激怒されたことがあった。「本当にそれをやりたい、やらなければならないということでも、理屈で押し切れないことがある。人を動かすには、リーダーとしての思いが大事だ」と。ペッパーの開発は、アカデミアで学んだリーダーシップを実践する場だった。
冨澤文秀 ソフトバンクロボティクス社長
ビジネスについて、孫社長は、その分野の専門家であるかということではなく、ビジネスモデルを作り、リーダーとして人を動かし、最善の策を展開できる能力があるか、ということを重視している。ロボット研究家がロボットビジネスをうまくやれる、というわけではないからだ。
島聡 元社長室長 松下政経塾2期生
松下幸之助氏は「従業員数が100人の時は自分がやる、という気持ちだったが、数万人の規模に成長した時は、拝むような気持ちになった」と話していた。このレベルのリーダーになると、カリスマではなく、非常に謙虚だ。孫社長も世界レベルの発想ができる、日本では数少ないリーダーだ。ただ、孫社長も成功を分かち合おうとはするが、まだまだ社員みんなが頼っている。よく指摘されるように、社長への依存度の高さはグループの課題だろう。
ジェフ・ハロック スプリント 前チーフマーケティングオフィサー
マサの口ぐせは「アグレッシブグロース」「キープグローイング」。日本でも同じみたいだね(笑)。ソフトバンクには日本で実績のあるノウハウがある。それを「どうして米国でできないんだ?」と言われる。どうすればいい考え方を生み出せるのか、どうすれば早くできるのか、こういう考えを追求しろとか、そういった話はよくしているよ。

 

元ペッパー開発リーダーの林要氏。プロジェクトの遅れを「お前の情熱が足りないからだ」と指摘され、「それならやってやる」と目が覚めた(撮影:今井康一)

孫社長が後継者育成機関「アカデミア」でよく話すのは、情熱が人を動かすということ。ペッパー開発リーダーを務めた林要氏も「ビジョンを伝え続けろ」と教わったという。

ちなみに、ニケシュ・アローラ氏が後継者候補と明言されたことで「アカデミアはどうなった」と思う方もいるようだが、アカデミアは当初から、3代目以降の後継者を育てる機関だった。2代目はグループ会社のトップから引き上げる方針だったが、これがニケシュ氏のグループ入りで変更になったというわけだ。

また、ビジネスは専門家が勝つわけではない、という点については、流通、出版、ブロードバンド、携帯などと、絶えずビジネスモデルの転換を続けてきた同社の歴史が証明していると言えるだろう。

大物にも飛び込んできた、「人たらし」

優しさは周囲には見せない?

冨澤文秀 ソフトバンクロボティクス社長
名古屋で中日戦を観戦しに行ったとき。孫社長がオーナールームからテラスに出てきて、僕の肩をつかんで、耳打ちしてきた。「お前にはたくさんチャンスをやるからモノにしろよ」と。急に熱く語られてね。
青野史寛 ソフトバンクグループ執行役員 人事部長
人間くさいところもあるんですよ。スプリントを買収する前に、突然「今から来い」と夕食に呼び出された。孫社長は100万円くらいのワインを出してきて、「海外に出ると人事はさらに重要になる。青野、頼むぞ」と。普段ボロクソに言われていても、そう言われたら頑張るしかないですよね(笑)。

 

普段から、部下を容赦なく、豪快にしかり飛ばす孫社長だが、こうした「人たらし」の面も持っている。かつて、高校時代に面会し「これからはコンピュータの時代になる」とアドバイスをもらった日本マクドナルド創業者の藤田田氏。ソフトバンクの創業期を支えた元シャープ副社長の佐々木正氏など、数多くの大物の懐に飛び込めた背景には、誰よりもしつこく、人懐っこい性格がある。

国内では、携帯電話料金の値下げ議論が進み、携帯事業に悪影響が及ぶ可能性がでてきた。主力子会社のヤフーも実質的な成長が鈍化しつつある。米国でも、携帯大手のスプリントは赤字が続き、経営改善に四苦八苦している。国内外のピンチを克服し「世界のソフトバンク」になれるのか。奮闘を続ける中、今後も孫社長の名言は増えていきそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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