石橋湛山論 言論と行動 上田美和著 ~「新しい湛山像」を抽出すべく模索
評者 増田 弘 東洋英和女学院大学教授
来春、石橋湛山没後40周年を迎える。また長幸男論文を嚆矢とする湛山研究も同様の歳月を重ね、今や研究の変遷自体が問われる段階となっている。
かつて評者は、1970年代が湛山研究の「草創期」、80年代が日本近代史に湛山を位置付けるための「論争期」、90年代は外国人研究者も参画した「国際期」であると論評したが、21世紀の昨今は、稀有な“小日本主義者”として戦前戦後にその名を刻印した湛山の思想と行動を、言論人・エコノミスト・政治家という3側面からトレースする「再検証期」に入ったといえよう。
その意味で著者は、湛山研究の第1世代(長、松尾尊兌、京都大人文研)や第2世代(筒井清忠、姜克實、評者)の研究成果や定説をいかに超克するかを研究目標に据えると同時に、湛山自身の思想(とくに戦中期)を批判的にとらえることで「新しい湛山像」を抽出しようと模索する、いわば第3世代を代表する新進研究者の一人である。
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