富士急行、熱海―初島航路の「新高速船」誕生秘話 「人気夜行列車の生みの親」が従来の船を大改装

国鉄末期から新幹線などのデザインに携わってきた工業デザイナーの大御所から、以前こんな話を聞いたことがある。
「デザイナーの役割とは焼き鳥の串みたいなもの。安全性、快適性、製造コスト、メンテナンスなどさまざまな要求を串刺しにして1つの形にまとめるのがデザイナーの役割だ」――。
乗り物のデザインとは格好いいデザインをすればいいというものではない。どんな客層が乗るのか、何人乗るのか、安全は確保されているか、維持管理の手間は増えないかといった観点から事業者のさまざまな部署の要望を聞き入れてデザインをしている。
「言葉に表れない要望」を形に
つまり、デザイナーの仕事とは、事業主のさまざまな要望を丁寧にすくい上げ、課題を見つけ、それをデザインの力で解決することである。課題が言葉で出てくるとは限らない。丹念に対話を重ね、言葉に表れない潜在的な要望を探っていく。
中には「内装を豪華に」「メンテナンスは簡単に」など相反する要望もあり、すべて受け入れた結果、平凡なデザインになることもあれば、逆に、既存の枠にとらわれない新しいデザインが誕生することもある。
長距離列車「WEST EXPRESS(ウエストエクスプレス)銀河」などのデザインで知られる建築家・デザイナーの川西康之氏は、事業主のみならず、現場に赴き利用者の意見も丁寧に拾い上げてデザインに生かすのが持ち味だ。
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