富士急行、熱海―初島航路の「新高速船」誕生秘話 「人気夜行列車の生みの親」が従来の船を大改装
そこで、海が見える席の数を増やすため、中央の席に大きな工夫をした。海が見えず敬遠されていたため、座席の位置を一段高くして、海が見えやすいようにした。さらに、小さい子供がいる家族連れが使いやすいようにボックス席にした。中央の席は格子上の装飾で囲われているが、これは個室感を出すためのパーティションであると同時に、揺れたときによろけないようにつかむ「握り棒」としての役割がある。

窓側の座席は窓の景色を見やすいように、窓に直角ではなく、ちょっとだけ(角度でいうと3度)窓側に傾けた。
また、スマホを見ている客には無理に景色を見てもらうような仕掛けはせず、窓が小さいスペースにスマホ専用のカウンター席を配置した。USB電源完備にして利便性も高めた。

「黒と黄緑」が基調の船内
カーペット敷きだったフロアには座席を多数設置したが、船内で横になりたいというニーズも考慮し、カーペットのスペースを少しだけ残した。半個室のスタイルにしたので、ファミリー層が靴を脱いでくつろぐことができる。
がらんとしていた遊歩デッキには竹馬型のベンチを多数配置し、腰掛けられるようにした。立っている人にとっては、船が揺れたときの握り棒になる。
眺望が良い前方の席は有料の「特別船室」。リニューアルではホテルのスイートルームのような高級感を出した。

展望デッキには人工芝の広場を配置した。そらかぜもデッキに芝生の広場があるので、水の上に浮かぶ芝生の広場は川西氏の十八番といえる。
イルドバカンス3世号には売店がなかったので、売店を新たに作った。それに合わせてほぼすべての席にドリンクやお菓子を置けるテーブルも付けた。飲食を提供することで船内滞在の満足度が上がるし、客単価も上がる。船内の配色は黒と黄緑が多用されている。
外観もイルドバカンス3世号の白から黒を基調としたデザインに大きく変わった。初島は海底が隆起してできたと言われており、島の岩は黒が多い。黄緑は島中にあふれる亜熱帯の植物をイメージ。つまり、「船そのものが初島の一部」という発想である。
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