富士急行、熱海―初島航路の「新高速船」誕生秘話 「人気夜行列車の生みの親」が従来の船を大改装
初島航路は現在1日10往復程度運航しており、大人1人の往復料金は2900円。富士急は直近では1994年就航の「イルドバカンス3世号」(定員870人)と2014年就航の「イルドバカンスプレミア号」(定員605人)という2つの高速船を初島航路に投入しているが、「箱根・熱海エリアのさらなる魅力向上を図るという方針の下」、就航から30年あまり経過したイルドバカンス3世号を全面リニューアルすることになった。

箱根エリアでは2024年にデビューした富士急グループの箱根遊船「SORAKAZE(そらかぜ)」も川西氏がデザインを担当した。今回のリニューアルのデザイナーに川西氏が指名されたのは自然な流れだった。
窓が見える席の少なさをどう改善する?
プロジェクトがスタートしたのはおよそ2年前。さっそく川西氏は富士急のスタッフとともに毎日のように乗船し、初島航路を何往復もして乗客の様子を観察し、船内の良い点、改善してほしい点などを聞き取り調査した。
上甲板の船室は窓側4席―中央3席―窓側4席という旅客機のような座席配列となっている。全席自由席なので座席は窓側から埋まっていき、中央の席は人気がない。
スマホばかり見ている客もいて、話しかけてみたら地元の人が多かった。船は観光客のほか、島民や島で働く従業員の通勤手段としても使われているので、毎日乗っていれば海の景色に興味がないのも当然だ。下の階はほぼ全面が土足厳禁のカーペット敷きで、ごろんと寝そべっている客が多い。

ほかにも気になったことがある。ゴールデンウィークや夏休みなどの繁忙期には窓側に座りたい人の長い行列ができ、30〜40分前から桟橋前に並ぶ人もいた。「高級リゾートに宿泊する人の交通手段として、これでいいのか」と川西氏は思った。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら