Adoはなぜ海外を目指し、海外で聴かれているのか《国内アーティストのグローバル戦略のいま》

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このように「日本で地盤を固めてから海外へ」ではなく、「最初から海外で」という成功例をXGが示したことは大きい。日本のアーティストにとっての選択肢がひとつ広がったと言えるからである。

Adoの海外志向とアニソン文化

Adoについては改めて説明する必要もないだろう。

メジャーデビューは2020年の「うっせぇわ」。大ヒットするとともに顔を見せない“覆面歌手”としても話題を呼んだ。その後2022年には「新時代」「私は最強」なども相次いでヒット。2023年には「唱」で『NHK紅白歌合戦』に初出場した。

Ado
“覆面歌手”として知られるAdo(画像:ユニバーサル ミュージック)

そのかたわら、早くから世界を視野に入れていた。2022年、ユニバーサルミュージック傘下にあるアメリカの音楽レーベル・ゲフィンレコードとのパートナーシップ締結を発表。海外への本格的進出を目指すことを表明した。

そして2024年2月から14会場14公演に及ぶ初のワールドツアーを実現。冒頭にも書いたように、現在は2度目のワールドツアー中。今回はさらにスケールアップし、アジア、中南米、欧米など33会場34公演を開催する予定だ。

こうして見ても、Adoがライブを通じて地道に海外ファンを増やしてきたこと、そしてその成果が今回のランキング1位として実を結んだことは容易に想像がつく。

ただ、本人の努力と才能は大前提にあるとして、海外進出がスムーズに運んだAdoならではの背景もあったのではないだろうか。

まず、海外のアニメ人気がある。いうまでもなく、いまや日本のカルチャー(サブカルチャー)の象徴になっているアニメは、ネットの普及もあって海外にも多くの熱心なファンがいる。アニメの主題歌や挿入歌であるアニソンは、そんなアニメ好きの海外の人びとに最も親しまれている音楽のひとつだろう。

実際、YOASOBI「アイドル」は『【推しの子】』の、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は『マッシュル-MASHLE-』のアニメ主題歌である。さらにAdoの「新時代」も、ご存じの通りアニメ映画『ONE PIECE FILM RED』の主題歌だ。

日本のアーティストが海外を目指す際、かつて苦労したのが言葉の壁だった。しかしアニソンの場合、アニメ作品の一部として愛唱されるもののため翻訳の必要はあまりなく、言葉の壁が低くなる。それはアニソンの有利な点だろう。海外では英語で歌わなければ難しいという常識も変わりつつある。

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