アスリートの盗撮を禁止する「撮影罪」施行も、法の抜け穴をかいくぐり…女子プロレスラーを苦しめた“被害の全容”と盗撮者の“呆れた言い分”
これまで、女子陸上などの競技では、選手が望まない性的なまなざしを受けることがあった。
YouTubeには、トラック競技の若い女子選手だけを取り上げたチャンネルが数多く存在する。そのような動画が異常な視聴回数になる現状がある。また、女子に限らず、ときには男子の選手の動画にも卑猥なコメントがつくこともある。

ディアナの事案では、問題が生じてから解決までに2年もの月日がかかっている。高校1年生なら高校3年生になる。「法律に違反していない」という主張は、彼らの競技活動に優先されるものだろうか。
2024年には福岡県でアスリートの盗撮を「性暴力」と定めた条例ができたが、罰則はない。
このたび成立した改正スポーツ基本法もまた、「アスリート盗撮」に直接的な罰則をもうけものではない。
これまで苦しんできたアスリートたちは、どんなことを期待してよいのか。
弁護士の解説
日本学生陸上競技連合の常務理事で「アスリート盗撮」にくわしい工藤洋治弁護士に聞いた。
——アスリートの盗撮問題への対応の観点から、今回のスポーツ基本法改正をどのように評価しますか。
今回の改正法(改正後の第29条)は、暴力と並ぶものとして、パワハラ、性的な言動、インターネット上の誹謗中傷等を列記し、これらが暴力と同様に「スポーツを行う者の環境」を害する行為であるという認識を明確に示している点が、大きな前進です。
加えて、「性的な言動」については、盗撮罪による処罰対象となる行為を「含む」という言い方がされており、それに限られないこと、すなわち盗撮罪による処罰対象行為「以外」も含まれうるという認識が前提になっている点も重要です。