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【朝ドラ】やなせたかし「グズグズしてたら恋敵が現れた」やっと動き出した運命の歯車

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  • 真山 知幸 伝記作家、偉人研究家、芸術修士(MFA)
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気持ちを伝えるまたとないチャンスである。だが、やなせはこう返答したという。

「いい人らしいじゃないか、あの人と結婚すればいい」

東京で新婚生活をスタートさせた

朝ドラ「あんぱん」の崇もなかなか暢(のぶ)に気持ちを伝えないので視聴者はイライラさせられっぱなしだが、実際のやなせも、なかなか煮え切れないタイプだったようだ。このときの態度について後年、こう振り返っている。

「ぼくも決して木石ではない。何度か恋したこともある。しかし実に不器用、実にドジで情けないくらいダメである」

小松記者からすれば、求婚されていることを打ち明ければ、止めてくれるかもしれないと期待したことだろう。ところが、完全に肩透かしを食らってしまい、もう自分が動くしかないと思ったようだ。

スコールが過ぎ去って、遠くで雷が鳴るのを聞きながら、2人で夜の街を歩いていると、小松記者は「もっと雷が鳴ればいい」と言って、小さな声でこう言った。

「やなせさんの赤ちゃんが産みたい」

この言葉にやなせは小松記者を抱き寄せて、2人は結ばれることになったという。ハチキンの小松記者はそこからの行動も素早かった。さっさと新聞社に辞表を出すと、やなせにこう宣言した。

「私、先に上京して、やなせさんを待っているわ」

東京へ行きたい――。やなせがそう感じたように、小松記者も東京に互いの活躍の場を移すべきだと考えていたようだ。終始、小松記者にリードされる格好となったが、やなせはそこから半年遅れて上京。田辺製薬時代の仲間が立ち上げた図案の会社に勤めることになった。

こうしてやなせは小松暢と東京で新婚生活をスタートさせる。だが、最愛のパートナーと結ばれたものの、クリエーターとしては、なかなか芽が出ない不遇の時代を過ごすこととなる。(つづく)

【参考文献】
やなせたかし『人生なんて夢だけど』(フレーベル館)
やなせたかし『ボクと、正義と、アンパンマン なんのために生まれて、なにをして生きるのか』(PHP研究所)
やなせたかし『何のために生まれてきたの?』(PHP研究所)
やなせたかし『アンパンマンの遺書』 (岩波現代文庫)
梯久美子『やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく』 (文春文庫)
真山知幸『天才を育てた親はどんな言葉をかけていたのか?』(サンマーク出版)

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