最近よく見る《A2牛乳》は海外で先行普及 「おなかに優しい」理由は、特別な遺伝子を持つ乳牛から搾るため
残された課題についても聞いてみた。
「これまで牛乳には『300円(税抜き)の壁』がありました。消費者の購買シーンを見ていると300円を切らないと、なかなか買いません。A2牛乳は魅力的な商品ですが、商品の価値と価格を最終的に決めるのは消費者です」(茂木氏)
伊勢崎市の大手スーパーの店頭も視察したが、人気商品の「明治おいしい牛乳」(900ミリリットル、明治)が278円、「榛名牛乳」(1リットル、榛名酪農)が289円。そして「アカディ おなかにやさしく」(900ミリリットル、雪印メグミルク)が249円だった。
“おなかに優しい”の先駆者「アカディ」は1978年の発売。商品特性はどう違うのか?
「『アカディ おなかにやさしく』は製造段階で乳糖分解している『乳飲料』で、乳糖が原因でお腹がゴロゴロする人に訴求した商品です。A2牛乳は、前に述べた乳牛由来の“たんぱく質の型”(βカゼイン)に注目した『牛乳』となります」(藤井氏)
牛乳と乳飲料は成分に違いがあり、牛乳や乳製品にミネラル、カルシウム、ビタミン、果汁などを加えて乳固形分3.0%以上を含むものが乳飲料だ。
「A2牛乳に関しては、安全性や健康面でのメリット、そして生産者が持続的に酪農を営めるコストを反映した適正価格での流通が必要です。節約志向が高まる中でも、そうした価値に共感していただける方を増やす取り組みが大切だと考えます」(同)
酪農家、中小メーカーの希望の星
「持続的に酪農を営めるコスト」について藤井牧場の藤井社長はこう説明する。
「酪農の現場では近年、飼料価格や資材・燃料などが1.5倍に高騰し、経営難・市場縮小・後継者不足にも直面しています。酪農家が生き残るためには、乳製品の新しい価値や選択肢を世の中に提供し続けることが不可欠です。A2牛乳は単なる一商品ではなく、酪農の未来を支える希望の種だと確信しています」
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