「あのとき私が…」末期がんの母を看取った50代女性の心の傷とは――大切な人が亡くなる前にしておきたい《後悔しない向き合い方》

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しばらくして、母親から「病院で診てもらってきた」という報告がありました。医師にお腹の違和感について訴えたところ、「心配しなくても大丈夫だろう」と言われ、検査も受けずに帰ってきたと言います。

それを聞いたAさんは「本当に検査を受けなくて大丈夫なのかな?」と一抹の不安がよぎったものの、「医師が大丈夫と言うなら」と思いとどまったそうです。

しかし、その数カ月後。Aさんは母親から思いもよらない報告を受けることになります。お腹の痛みが続いていた母親が別の病院で検査を受けたところ、大腸がんらしき影が見つかったというのです。しかも末期の可能性が高いとの診断で、医師から「すぐに精密検査を受ける必要がある」と促されます。

後日、改めて病院で検査を受けると、ステージ4の大腸がんであることがわかりました。

あのときに感じた不安を、なぜそのままにしてしまったんだろう――。

Aさんは母親から症状を聞いていただけに、病院で検査を受けずに帰ってきた母親に、「私も一緒に行くから、もう一度病院で検査を受けよう」と強く言えなかった自分を責め、深く落ち込みました。

抗がん剤治療を受けるかどうか

母親の闘病中にとった自身の行動についても、Aさんには心残りがあると話します。

精密検査を受けた後、抗がん剤治療を経て手術をした母親は、手術後も抗がん剤治療を続けるかどうかについて、主治医から選択を迫られます。

主治医は「これ以上はやらないほうがいい」という意見で、母親は医師の言葉をそのまま受け入れ、「わかりました」と返事をして帰ってきてしまいました。

Aさんは「1人で大丈夫」という母親の言葉を信じ、病院に付き添いませんでした。あとから話を聞くと、母親は医師が「これ以上は(抗がん剤治療を)やらないほうがいい」とする理由をよく理解しないまま、なかばその場の雰囲気に流されるような形で「わかりました」と返事をして帰ってきたようです。

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