バイオ医薬でも韓国が急成長、「国内生産空洞化の恐れ」と製薬業界団体が危機感

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急成長するバイオ医薬品。2010年の全世界での市場規模は1800億ドルに達しているとされている。特に抗がん剤や抗リウマチ薬など抗体医薬の伸びは著しく、米欧の大手製薬企業でも稼ぎ頭の製品に育ちつつある。

ところが、抗体医薬で日本は米欧の後塵を拝しているうえ、ここ数年、韓国のセルトリオンやサムスンバイオロジクスなどが、バイオシミラー(バイオ後続品)の受託生産増に対応すべく積極的な設備投資を敢行。日本はこの分野でも立ち遅れがあらわになっている。

3月21日から23日にかけて東京都内で開催された「国際医薬品原料・中間体展」(CPhI japan)での講演で、日本製薬工業協会の田中裕・バイオ医薬品委員会委員長(中外製薬常務執行役員=上写真=)は、「今のままでは、家電製品と同様にバイオ医薬品の生産も完全に空洞化し、国内で生産が行われなくなる恐れすらある」と危機感を表明。「政府にはバイオ医薬品開発拠点イニシアティブのような政策を講じてもらいたい」と語った。

講演で田中氏は「バイオ医薬品は物質的に極めて複雑であることから生産の難易度が非常に高い。設備投資額は従来の低分子医薬品の3~10倍も必要であるうえ、品質管理や製造設備のランニングコストも多大なものになる」と指摘。その一方で、「省エネ、省資源、知識集約型であるという点でぜひともわが国で育てるべき産業だ」と力説した。

抗体医薬開発への取り組みが遅れたことから、現在、日本で製造されている抗体医薬は中外製薬の抗リウマチ薬アクテムラ(一般名トシリズマブ)1品目にとどまる。近く抗体医薬の新薬承認を得ることにより、協和発酵キリンでも量産ラインが稼働するが、それに続く“持ち玉”を欠くのが実情。製造設備が乏しいために、「人材も育っていない」(田中氏)という。その一方で、「韓国や中国では、国の主導でバイオ医薬品の製造設備への追加投資が行われている」と田中氏は指摘した。

田中氏は、「バイオ医薬の創薬の芽はたくさんある。それを大手製薬企業が開発で取り上げるまでの橋渡しができていない」としたうえで、「バイオベンチャーにアドバイスする組織やシステムを国主導で作っていただきたい」と強調。「小規模のパイロット設備を作り、技術者育成や研究の場とすることが必要。税制優遇についても考えていただきたい」と語った。
 
 製薬協は今後、政府にバイオ医薬品の産業振興策のあり方を提言する方針だという。
(岡田広行 =東洋経済オンライン)

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