奈良メガソーラー造成現場で「土砂2度流出」… それでも止まらない開発の行方

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この「申請書類上の誤り」問題は、県の指示で事業者が工事を停止したうえで事業地と下流域を再調査、書類を作り直して林地開発の変更申請を出し直す形で「決着」。2023年2月には改めて林地開発許可が降りて、建設工事が再開された。

メガソーラー開発地(赤い部分)と下流域の住宅地(地理院タイルを使用し、裁判資料に基づきごん屋が作成)

林地開発許可制度をめぐる問題

「林地開発は、要件が満たされていれば都道府県が許可しなければいけないので、許可が降りないケースはまれ」と、森林地域の開発をめぐる取材を行うたびに、私は何度も耳にした。

要件とは、災害の防止、水の確保、水害の防止、環境の保全。平群町のメガソーラーでも、4つの要件をクリアして許可が降りている。そう判断した審査の中身を問うたのが、住民による県を相手取った裁判だといえる。

一方で、林地開発許可制度を所管する林野庁も、太陽光発電事業を目的とした開発案件が増えたことから、制度の改善について検討した。古くは、2019年6月~9月に「太陽光発電に係る林地開発許可基準のあり方に関する検討会」で検討した結果、同年12月末に許可基準の整備を行った。

また、2022年6月には同検討会が中間とりまとめを公表。その結果、許可が必要な開発面積の引き下げなどが行われたが、その後、検討会は開かれていない。奈良県平群町の住民が問題視している開発地内の調整池などの防災設備のあり方や、造成工事中の2度にわたる事故の原因と対策は、こうした全国での規制のあり方にも関係してくる。大阪高裁で始まる控訴審の行方が注目される。

河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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