奈良メガソーラー造成現場で「土砂2度流出」… それでも止まらない開発の行方

山岡さんも「素敵な山だったんですよ」と懐かしむ。「里道があって、大阪からハイカーがいっぱい来た」とも。里道とは、かつて薪炭材や馬などのエサ、肥料になる草を採るために村人たちが行き来した道。修験道の開祖が開いた寺・千光寺に通じる道でもあることから、ハイカーに人気の道だったという。
山岡さんが地元平群町で小学校教員をしていた昭和50年代半ばころには、転校生が一度に200人も入って来た。大阪のベッドタウンとしての開発が進み、ノウサギが走る山のふもとに住宅がどんどん建った。
平群町のホームページには、倭建命(やまとたけるのみこと)が詠んだとされる「国偲びの歌」が載っている。古事記にあるこの歌には、「平群の山」が登場する。歌に出てくる広葉樹の林もあったことから、「造成工事が進む現場付近を詠んだのではないか」(平群町幹部)とされている。
住民たちがメガソーラーを問題視している理由は、土砂災害を誘発する恐れが一番大きいが、景観や歴史的に愛着のある場所であることも大きい。

住民らは奈良県に盛土規制法に基づく調査や改善命令を求めた
4年前の2021年7月、静岡県熱海市で発生した大規模な土石流が日本列島を震撼させた。源流部の盛土の中に堆積した水が原因とわかり、翌2022年5月、通称「盛土規制法」が公布された。都道府県知事が盛土により人家に被害が及ぶ可能性のある区域を指定し、安全対策が行われているかどうかの調査や是正措置を命じることができる。
奈良県は2025年5月、県全域を規制区域に指定し、盛土規正法の運用がスタートした。
このため、平群町のメガソーラー造成地の下流域に住む住民、室谷悠子弁護士ら、土砂災害の専門家が6月11日に奈良県庁を訪れ、盛土規制法に基づく立ち入り検査や改善命令の発出を行うよう求めた。
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