山陽新幹線、連結してみて何がわかったか JR西の事故復旧訓練で得られた"気づき"

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続いて、メーンイベントである新幹線の連結が始まった。搬送用仮台車を付けて停止している500系新幹線に、700系新幹線が微速走行と停止を繰り返しながら近づいてきた。両者が2メートルまで近づいたところでいったん停止。両者の連結器の位置確認が行われた。

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連結作業には予定以上の時間を要した

500系新幹線はジャッキアップしているので、通常より数センチほど位置が高い。その分だけ500系の空気ばねの空気を抜いて連結器を下にずらし、連結ができるようにした。

しかし、この後に問題が起きた。連結器の接続はできたものの、電気系統のケーブルや空気ブレーキのホースの接続に手間取ったのだ。さらに、500系のブレーキ確認に予想外の時間がかかってしまった。安全確認が終了して連結された両方の列車がようやく動き出したのは、予定時刻を30分以上上回っていた。

「今回は昼間で平地だったのに手間取ってしまった。夜間だったり、雨が降っていたり、地盤に傾斜が着いていたり、あるいはトンネル内だったり、橋の上だったりしたら、さらに難しくなる」(JR西日本の作業スタッフ)。確かに、訓練でさえ予定以上の時間がかかるのだから、環境がまったく違う実際の復旧作業はさらに大変なはずだ。

鉄道会社に求められる対応とは?

自分が乗っている列車がトラブルに遭遇したとき、当初伝えられた復旧時刻を過ぎても復旧せず、やきもきした経験は誰でもあるだろう。復旧作業の状況が乗客に逐次伝えられれば、多少の不満は解消されるはずだ。

さらにいえば、復旧作業には時間がかかること、時間どおりに進まない可能性があることを、鉄道会社は一般の人にもっと知ってもらう努力をすべきである。こうした復旧訓練を一般に公開するような方法も考えられるだろう。

レールの交換や連結作業で現場の作業員は多くの気づきを得たはずで、それは今後の作業手順の改善につながるに違いない。この気づきは、広報も含めた全社レベルで広がってこそ本物となる。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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