【産業天気図・損害保険】規模拡大迫られる各社。“再編第2幕”説に現実味
06年9月に主に九州地方を襲った台風13号の保険金は業界で約1200億円に上り、過去6番目の支払額になった。その結果、07年3月期の自然災害による保険金は大手6社(東京海上日動火災保険=ミレアホールディングス<8766.東証>傘下=、損保ジャパン<8755.東証>、三井住友海上火災保険<8752.東証>、あいおい損害保険<8761.東証>、日本興亜損害保険<8754.東証>、ニッセイ同和損害保険<8759.東証>)で1300億円へと7割拡大する。
ただ保険契約自体は、主力の自動車保険が契約台数の増加に続き、補償範囲を広げた商品が売り上げを拡大。住宅着工件数や企業の設備投資の恩恵を受ける火災保険と、物流増加が寄与する海上保険も増勢を守っている。資産運用面でも保有株からの配当金収入などが続伸し、最大手のミレアとともに、それぞれトヨタ自動車、日本生命と連携を深めるあいおい、ニッセイ同和は経常増益を達成する見込みだ。
が、その一方、保険金不払いで金融庁から一部業務停止命令を受けた損保ジャパンと三井住友海上は経常減益を強いられる。自動車を中心に新商品投入で出遅れた日本興亜も株売却益でようやく経常増益を確保するなど、苦戦を強いられている。
3月14日には東京海上日動と日本興亜、そしてあいおいが新たに医療保険など第3分野保険で業務停止処分を受けた。さらに損保各社は3月末までに火災保険の建築構造誤認による過徴収について、6月末までに自動車保険の不払いについて、順次、調査結果を金融庁に報告する。ここでも悪質な法令違反が見つかったり、十分な経営管理体制が構築できていないと判断されれば、なお追加処分の可能性がある。08年3月期も各社は営業より内部管理体制の整備などを優先せざるをえない状況が続き、業績は下振れ懸念を抱えている。ミレアが長期の第3分野保険の販売を東京海上日動あんしん生命へ移すことを決めたのに続き、日本興亜損保も第3分野保険の販売を日本興亜生命に移す方針を固めたが、同様の再編の動きが続きそうだ。
07年10月には「郵便局会社」が損保商品の販売に参入、12月には銀行窓販も全面解禁される。国内の自動車・火災保険市場は成熟化し、第3分野保険や海外市場に活路を求める点は各社共通の課題だが、そのためには規模拡大が欠かせない。損保業界は1998年の保険料率自由化を機に再編第1幕を終えたが、新たに登場する巨大な販売チャネルの活用の巧拙が企業間格差を広げる可能性は高く、上位損保を中心にした“再編第2幕”が起きるシナリオは、一段と現実味を増している。
【岡本享記者】
(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部
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