日本企業は「AI技術」を使って何をするべきか 世界では技術の争奪戦が始まっている
――データという意味では温度もフェイスブックの投稿も同じだ、と。それがアルゴリズムで解析される。
そうです。このアルゴリズムの中に最新の自律的なAI(人工知能)技術が使われているかもしれません。ビジネスにおいては、AIはデータから自然言語処理、画像認識、音声認識、推薦や予測等を可能にする、ではその価値にいくら払うのか?と考えることが重要です。ビジネスなので、売り上げが上がるか? コストが下がるのか? 投資金額はいくらか?というシンプルな問いになります。
――AI関連では技術的に夢のような話が多い中、現実的なビジネスの話になりました。
ビジネスなので投資対効果が計量化できるはずです。例えばGEのように航空機のエンジンにセンサをつけて燃料効率を上げ、故障の発見を迅速化すれば、航空会社は数十億円のコスト削減ができます。元々の金額が大きいためIoT活用のインパクトが大きい事例です。
日本企業の工場でもデータの「見える化」までは行っているところが多いので、次はアルゴリズムによる自律的なフィードバックで在庫回転率、リードタイムを変えられるか?という問いになります。それが投資に見合うかが論点です。
アルゴリズムは自社でつくる?
――そうなると賢いアルゴリズムが必要になってきませんか。
企業が直面するのがまさにその点です。アルゴリズムは自社でつくるか?アウトソーシングするか? 他社を買収するか?という戦略的意思決定が必要となります。単純にシステム会社に頼めない理由は、賢いアルゴリズムこそが競争優位性の基であり、自社で洗練していく必要があるからです。
ドイツのシーメンスなどはソフトウエア会社を買収し、この領域での力をつけてきました。GEもカリフォルニアにソフトウエア拠点をつくり拡充しています。日本でも以前にソーシャルゲーム会社でデータサイエンティストの争奪戦が繰り広げられましたが、同じことが製造業も巻き込んで起きていくことでしょう。人材獲得のためにAIをやっているベンチャー企業との提携を模索する日本企業も多いですが、正直、ほとんどの会社が大したことがないのでその真贋は見極めるべきです。ここは90年代後半のインターネットの勃興に似ています。あの頃はホームページ作成に大きなお金が支払われていました。
――日本企業はどこに注意してアルゴリズムを使うべきでしょうか。
製造業であっても従来から組み込みソフトの工数などは多大であり、ソフトウエア技術者はいました。IoTであればハードウエアエンジニア、システムエンジニア、データサイエンティストを組ませる必要があります。経営レベルで考えるとバリューチェーンのすべてにAI活用の可能性があるのが現在です。そしてそれは全産業に関係します。経営者は自社のバリューチェーン上のどこが最も影響を受けるのかを考えるべきです。
たとえばインターネットの広告テクノロジーであれば、CPA(顧客獲得単価)がアルゴリズムで変わればキャッシュフローが変わります。産業用ロボットならロボットへの人間によるティーチングが減り、AIで自律化できれば人件費が変わります。
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