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「新聞は終わった」と言われるが……。読者シェア7割を維持する《地方新聞の勝ち筋》、家業を継いだ彼女の機転と地方で働く充実感

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紙面の方針決定などは編集局の社員たちに任せ、自身は社の経営と父から引き継いだコラム「世迷言」の執筆、そして時には取材に出る日々。その中で、次の読者となる世代の中高生に東海新報を知ってもらう活動にも力を入れている。

山火事でSNSを再開、購読申込増の契機に

震災から10年以上がたち、復興工事が終わった2025年2月に大船渡市で林野火災が発生した。この火災では、平成に入ってから最大規模の約3400haが焼け、自宅を失った人たちは仮設住宅での生活を余儀なくされた。

この危機は東海新報のさらなる転機になった。

これまでは会社として、新聞紙面で地域の人たちに情報を届けることを使命としてきた。だが、約2週間にわたり火災が拡大する中、焼失範囲や出火原因をめぐり、誰が書いたかわからない、内容が正しいかもわからない、まさに真偽不明の情報がSNS上で広がっていた。

この状況を目の当たりにした鈴木さんは、13年間休眠状態だったXを再開し、Facebookと併せて自ら更新し始めた。

「新聞を読んでくれる読者だけでなく、遠くにいる家族や出身者にリアルタイムに情報を伝えるのが今の使命だと思ったんです」

有料の紙面の一部を無料で公開することには、社内外からさまざまな意見が上がった。だが、このときの機転によって「やっぱり災害時に頼りになるのは地元の新聞だ」「市民に寄り添う記事に救われた」といった声が寄せられるように。結果、SNS発信に助けられた人たちが地元紙の価値を見直し、購読の新規契約にもつながったという。

長年、東海新報が培ってきた信頼と徹底して一次情報に当たる姿勢が、真偽不明の情報にあふれたSNS時代だからこそ評価された。鈴木さんは地域に根を張り、地域の読者によって支えられる地方新聞を守っていく意義を見出している。

自称「無趣味」で、休みの日であっても出社してしまうという鈴木さんは「東海新報は、仕事でありライフワーク」と言い切り、「ほかにやりたいこと? 東海新報で働くこと以外に思いつかないんです」と笑う。

「大船渡に帰ってきて20年近くたちますが、未だに毎日発見があって、そのおもしろさをコラムや記事で伝えることが本当に楽しい」

仕事や趣味と暮らしを切り離さず、地元の人々とともに歩み続ける──ーそんな“ライフワークとしての仕事”が、小さなローカル新聞・東海新報の経営者・鈴木さんの等身大だ。

【写真】地方紙を守るために奮闘する鈴木さんの様子など(9枚)
生活者目線での発信を続ける鈴木さん(写真:筆者撮影)

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