しかし、この3つのどのシナリオが起きても、既発債市場はパニックになる。国債暴落のリスクが目の前にあり、かつ流動性のある市場が目の前にある。現在国債を保有している投資家は「とにかく売れるうちに売っておこう」ということになり、一方、国債に投資しようとしている投資家は、今、買う必要はない、ということになる。みんなが売ろうとし、買おうとする人は誰もいない。だから暴落する。
株式と違うのは、債券には満期があるということで、普通の場合はこれがパニック売りの歯止めになる。なぜなら、暴落がいったん始まったら、株ならとにかくまず売って、底で買い戻すという戦略がとられるので、パニック的に一気に売りが加速するが、底打ちも早く、そこから戻す展開になる。
超長期債は「死の入り口」への瀬戸際
だが債券なら、暴落なら慌てて売っても損するだけだから、満期まで保有を続ける塩漬け戦略で乗り切ろうとするからだ。だから売りが売りを呼ぶ、ということにはならない。
しかし、一方、とにかくいち早く売って、その後買い戻すという戦略をとる買い手はいないから、いったん暴落が限度を超えると、取引が成立しなくなる。リーマンショック前のパリバショック(2007年)で始まった債券市場のフリーズとはそういうことであり、市場は死んでしまうのだ。
だから、ソブリン債、つまり政府の発行する国債は、10年債でいえば利回りが7%を超えるともはや意味がない。誰も買わなくなるのだ。だから、7%を超えたときのシミュレーションは実際には意味がない。なぜ7%かというと、複利で10年では倍になってしまい、経験則からその場合は利払いが発散してしまう可能性が極めて高いからだ。その場合は、政府は10年債を発行せず短期債を発行し、ロールオーバー(短期での借り入れを繰り返す)することになる。
現在、日本で起きていることは、これが超長期債で始まりつつあるということだ。アメリカの30年債に比べれば、まだ日本の30年債の利回りは低いというのは安心材料にならない。前述のように、これはスピードの問題であり、暴落のスピードが加速していることが問題だ。
また、変化率ということでいえば、もともと非常に低いところから始まっているから、変化幅が小さくても恐怖感はある。さらに、日本国債市場でこれまで金利がつかなかった時間があまりに長かったことから、いったん上がり始めるとパニックが起きやすいということだ。
さらに、投資家の多様性がないこと、そして、日銀の買い入れ量が減少するとなると、すでに大手銀行は実質的に国債の長期保有のプレーヤーとしては意味がなくなってしまっており、ほぼ買い手不在であり、年金、生保などの一部に偏ってしまっていることも危険材料だ。
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