「東大は中国の受験敗者の逃げ込み先?」≪中国受験戦争≫塾代200万円超、合格率は約3割の苛烈

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王さんの故郷は北朝鮮との国境に位置する遼寧省丹東市の東港。農業と漁業が盛んな小さな辺境の町だ。彼女は母校で初めて清華大学に合格した文系生であり、丹東市の「高考状元」だった。

「幸いなことに、当時両親はとても理解して応援してくれた。父は『大学入試が終わったときに後悔しなければ、それが成功だ』と言ってくれた。こころの救いになった」と王さんは13年前を振り返る。

「清華大学は毎年約3000人を合格させており、競争の激しさはここ十数年間ずっと変わっていない。ただ、ここ数年は入試のカタチがやや柔軟になり、数学、化学などのコンテストに参加して優秀な成績を収めた学生が、清華大学への推薦入学の資格を得られる場合もある。ただ、こうしたケースは『九牛の一毛(ごく少数)』といえる」(王さん)

名門大学への入学を果たした王さんとは対照的に「受験戦争の敗者」となった若者たちは、その後どの道を選ぶのだろうか。翌年の再挑戦を選ぶ者がいる一方で、年々増加しているのが海外へ留学する学生だ。

筆者は長年にわたり、在日中国人留学生の教育に携わってきた。その経験の中で見えてきたのは、日本文化に憧れて来日する学生が多い一方、親に命じられて日本に渡る者、さらには「受験戦争」からの逃避先として日本を選ぶ者もいるという現実だ。

中国の名門大学にあと一歩届かず、日本で新たな進路を切り開こうとする留学生たちがいる。ある留学生進学塾で出会った何人かの若者は、わずか数点差で北京大学や清華大学への入学を逃し、「中国の名門大学に入れないならばアジアの名門校に挑戦しよう」と日本留学を決意した。

彼らは実際に、東京大学をはじめとする難関大学に見事合格した。「日本では自分で大学を選んで受験できるし、留学生には入試の際に優遇制度もある」と、日本留学のメリットを語る留学生は多い。

高考だけが人生の道ではない

馬さん
職業高校に通う18歳の馬さん。日本料理が大好きで、日本語学習に励んでいる(写真:馬さん提供)

最近、筆者は故郷の知人の紹介で、ある職業高校に通う馬さん(18歳)と出会った。

彼は日本料理が大好きで、現在は福建省福州市の日本料理店で実習に励んでいる。将来は日本で本格的に学びたいと、日本語の勉強に熱心に取り組んでいる。

「高考だけが人生の道ではない。夢を実現するために日本留学したい」。そう語る彼の瞳はまっすぐだった。馬さんが来年4月、無事に日本へ渡航し、夢への一歩を踏み出せることを心から願っている。

黄 文葦 ジャーナリスト

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こう ぶんい / Kou Buni

日本と中国、日本語と中国語を愛する在日中国人フリージャーナリスト。学校法人白萩学園名誉理事。中国の大学と日本の大学院でマスコミを専攻、日中両国のマスコミの現場を経験。2000年来日以降、日本語と中国語で教育、社会、文化の問題に焦点を当てたコラムを執筆し、両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。19年に電子書籍「日中文談: 在日中国人の日本観(エッセイ)」を出版。20年8月から23年7月までの3年間、日中文化比較のメルマガ「黄文葦の日中楽話」を発行。24年10月、「新中国語から中国の『真実』を見る」(風人社)を出版。

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