“ウォークマンを知らない”世代にソニーのXperiaはどう響くのか。海外スマホ市場で苦戦する日本メーカーの戦略
このようにある意味“尖ったカメラ”をウリにするスマートフォンが各社から出ているのがグローバル市場の現状だ。Xperia 1 VIIのAIトラッキングなど新しいカメラ機能は確かに差別化できる特徴だ。しかし大手メーカーとは異なる方向での機能アップは「トレンドに乗っていない」というイメージを受けてしまう。ソニーが前世代のモデルから搭載している人物や動物の瞳を追いかけピントを合わせる「瞳AF」も、大手メーカーがそれを売りにしない状況では機能そのものを認知させにくい。
優れたカメラ性能をアピールするのであれば、まずはトレンドに乗らなくては勝負に加われないだろう。そのうえでXperiaならではの機能を前面に出していくことが必要だろう。
ラインナップ拡充か、唯一無二の存在になるか
Xperiaシリーズはヨーロッパやアジアの一部の国で販売されている。実際に海外の家電量販店に行けばXperiaコーナーを設置して売り込みを図る国もあるにはある。ここ数年のXperiaシリーズの展開はハイエンドの「Xperia 1シリーズ」、ミドルレンジの「Xperia 5シリーズ」、コスパ重視の「Xperia 10シリーズ」と3つのラインナップに絞られていた。ところが2024年は「Xperia 5」のラインは製品がなく、「Xperia 1 VI」と「Xperia 10 VI」の2モデルだけだった。しかもモデルチェンジは1年に1回だけだ。
アップルは毎年9月に新製品を出しており、それを見るとソニーも似たような製品展開を行っていると感じられるだろう。また日本市場におけるサムスン電子の動きも少数製品で広い層をカバーしている。これは日本がキャリア主導の端末販売市場であり、販売するスマートフォンの機種はキャリアが決定しているからだ。しかし日本市場のスマートフォンの展開は海外市場とは全く異なっている。
ヨーロッパ、アジア(韓国を除く)、中東、インド、アフリカなど多くの国ではスマートフォンはキャリアではなく端末メーカーが独自に販売し、消費者はそれを自由に購入している。そのため家電量販店に限らずキャリアの店舗に行っても、ハイエンドからエントリーモデルまで、各社が複数の製品を出している。サムスン電子やシャオミが1社で10機種以上を販売していることは当たり前だ。しかも中国メーカーは年に2回や3回のモデルチェンジも当たり前なのだ。
このような市場でわずか2〜3機種しかないXperiaが目立つためには、ラインナップを増やして認知度を高める必要があるだろう。しかし現在のソニーの力ではそれは難しい。そうであれば他社が追いつけないような唯一無二の存在である「超ハイエンド」「超プレミアム」といった尖った製品で勝負をかけることも有用だろう。
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