「出社か、リモートか」では語れない「職場のかたち」。“出社回帰”の波の中で本当に大切な問いとは? 《静かに分断する職場》を防ぐ方法

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大切なのは、オンラインであっても、リアルであっても、良い感情が広がっているかではないでしょうか。そして、リアルであるほど、この感情が伝播しやすく、プラスにもマイナスにも大きく振れるということを意識する必要があります。

では、より良い感情が生まれ、連鎖することが本当に必要な場面とは、どんな場面なのでしょうか。

それは、困っていることに寄り添い、助け合いたいという場面と、思いと知恵を持ち寄り何かを生み出していく場面です。支援と解決、協力と共創が必要なときほど、顔を突き合わせ、非言語のコミュニケーションも含めて、互いを感じ取り、ともに悩み、支え、対話することが求められます。

この支援と解決、協力と共創が、会社にとっても個人にとっても本当に必要だということを実感する場面をたくさんつくりだしていくことが、ともに働く意味を取り戻すということになるのではないでしょうか。

職場を、自分が仕事をする場所(仕事場)として捉えるのか、互いの仕事や思いをつなぐ場所と捉えるのか。それによって、職場の意味が大きく変わります。

感情の交流と心理的エネルギーが生まれる場所

伊丹敬之名誉教授は『場の論理とマネジメント』(東洋経済新報社)という著書で、「場とは情報的相互作用と心理的相互作用の容れもの」であると言っています。

場が共有されれば、そこに情報が交流するだけでなく、感情が行き交う。その感情が共鳴し、共感を生むことで、心理的エネルギーが生まれる。それが前向きな行動の連鎖を起こしていく。

そう考えると、オンラインであれ、リアルであれ、そこに情報の交換だけでなく、感情の交流があり、それが重なり合うことで心理的エネルギーを生み出すことができているかが大切になるのではないでしょうか。

そうした感情交流と心理的エネルギーが生まれていなければ、それは職場とはいえないのではないでしょうか。

そのカギになる概念が、組織感情というものです。

自分たちの職場に足りない感情は何なのか、どんな感情が広がる職場にしていきたいのかを一緒に考えてみる。そうした感情が広がるために、どのような取り組みをしたらよいのかをみんなで知恵を出し合う。

そうした対話と取り組みを重ねていく中で、自分たちの中に良い感情の連鎖を起こしていく。

こうした良い感情が連鎖する土台としての職場が生まれれば、そこに集う意味、ともに働く意味がさらに高まっていく。それが支援と解決、協力と共創を生み出していく。

静かに分断する職場 なぜ、社員の心が離れていくのか (ディスカヴァー携書)
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職場は、自然環境の観点で考えると、土壌だと思います。豊かな土壌には、水と空気の流れがあり、菌や微生物が分解と創造と伝達を促しています。

この豊かな土壌があれば、植物は芽を出し、葉を茂らせ、実をつけます。そこにさらに虫や鳥が集まり、種を運び、豊かな土地が広がっていく。職場づくりは、この土壌づくりと似ているのではないでしょうか。

みんながすくすくと育っていく、元気にイキイキとする、そんな土壌づくりをする。そこに息づく生物が互いに影響を与えながらも、支え合い、成長していくことで、多様性が広がり、それが互いを支え、場全体の持続性を高めていく。

人が育ち、そこに心的エネルギーが生まれ、それが人と組織の行動を変えていく。そこで得られたものがまた、人を育てる土台になり、それぞれが自分らしい力を発揮できる土壌をつくっていく。そんな土壌をどうつくるか、良い感情が行き交う職場をどうつくるか。一緒に知恵を出してみませんか。

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「正社員vs非正規」「管理職vs一般社員」、職場に潜む“見えない壁”の正体。《何を考えているのかわからない》と心の距離は広がるばかり
■​実はじわじわ広がっている「静かなる職場の分断」。「管理職になりたくない」社員が増加、その背景にあるもの
高橋 克徳 ジェイフィール代表取締役 コンサルタント 武蔵野大学特任教授

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たかはし・かつのり / Katsunori Takahashi

1966年生まれ。一橋大学大学院修士課程終了、慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。野村総合研究所、ワトソンワイアットを経て、2007年「組織感情とつながり」を機軸とするコンサルティング会社ジェイフィールを共同で設立。関係革新、仕事革新、未来革新をテーマに、互いの感情と向き合い、思いを重ね、未来に踏み出す組織づくり、リーダーづくりを支援している。2013年より東京理科大学大学院イノベーション研究科教授を兼任。ご機嫌な職場づくり運動実行委員長。組織や職場をめぐる社会課題をどう解決するかという視点で、著作・講演活動を行っている。『不機嫌な職場』(共著、講談社)は28万部を超えるベストセラーとなる。その他、著書多数。

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