その背景には、今までの働き方の中で無理をしてきた自分がいたのではないでしょうか。だから、リモートワークという新しい働き方を体験したとき、素直に気持ちが楽になった、解放された。それは簡単に手放したくないと思うのは自然なことだと思います。
一方で、やはり「リアル出社が大事だ」「できれば前のようにみんなで一緒に働きたい、働くべきだ」と思う人もいます。
ちょっとしたことでもすぐに相談することができた、先輩からいろいろなアドバイスをもらえた、みんなでワイワイ対話することで知恵が湧いてきた、落ち込んでいたときに励ましてもらえた、何かを達成したときに喜びを分かち合えた……。
こういった経験、瞬間を職場の中で積み上げてきた人たちは、ともに働く意味、喜びを心の中に持っています。
ともに働くことの意義を実感してきたのか、そう思える瞬間がほとんどなかったのか。それによって受け止め方が大きく異なっているのではないでしょうか。
「全員出社体制に戻します」と言われても
こうした感情の違いが生まれている中で、経営者からコミュニケーションが大事だから全員出社体制に戻しますと言われても、一方的だ、社員の気持ちをわかろうとしないと感じる人が出てくるのは当然です。
出社した方が必ずしも良いコミュニケーションが生まれ、良い支え合いと対話が生まれ、イノベーティブになれるとは思えない。前のように個々人が淡々と目の前のことをこなす職場のままなら、リアル出社に戻す意味がない。
さらに、管理志向の強い組織では、言葉通りに受け止められない。どうせ、オンラインだとさぼっている人がいるから管理しようとしているだけではないかと思ってしまう。
職場という場所がイキイキ、あたたかい場所であれば、誰もがその意味を見出せたのだと思います。ところが職場という場所が、ギスギス、冷え冷えとした場所だった人からすると、あの場所には戻りたくないと思う。そんな心理が働いているのではないでしょうか。
今、問われていること、それは「ともに働く意味や意義」をあらためて共有すること、しかもそれが実感できる職場を取り戻すことなのではないでしょうか。
わたしは、リアル出社でなければつながれない、支え合えないとは思いません。でも、人のコミュニケーションには、言語コミュニケーションだけでなく非言語のコミュニケーションもあります。
言い換えると、人は情報を伝達し合うだけでなく、感情も伝え合っている。それは言葉だけでなく、表情や振る舞い、そこから生まれる空気感を通じて、コミュニケーションしています。
オンラインでのコミュニケーションの難しさは、この非言語のコミュニケーションが難しいことです。それこそオンラインミーティングで画面を消していると、表情も振る舞いも見えない。反応も見えない、雰囲気を感じ取ることができない。
職場にいるとそれがなんとなく感じ取れる、それこそ職場全体の空気を感じる。それがギスギスした感情や冷え冷えした感情、ネガティブな空気感をつくると、互いの距離をさらに広げ、コミュニケーションを難しくする。
でもそこにイキイキした感情やあたたかい感情、ポジティブな空気感が広がると、互いの距離が縮まり、心理的な安全性が高まり、良いコミュニケーションが生まれる。
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