「ジェスチャーに矛盾」トランプ大統領“偽の白人迫害映像”を首脳会談で堂々と提示した深層心理

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本来であれば、相手国の首脳に向き合い、責任を問いただすのが通常の外交的態度です。しかし、彼は視線をカメラに向け、数分にわたり語りかけました。これは視聴者、すなわち“観衆”へのアピールであり、「我々白人は被害者である」と感情に訴えるメッセージの発信だと考えられます。

最後に、トランプ大統領が紙の束をラマポーザ大統領に手渡す場面で、再び象徴的な動きが見られます。彼は首を横に振りながら、手のひらを上に向けて資料を渡しました。この動きは、アメリカにおいて「よくわからない」「確信がない」といったニュアンスを含む典型的なジェスチャーです。

証拠を渡す際の“矛盾した”ジェスチャー

本来、証拠としての重みを持たせたい資料であれば、確信に満ちた所作で提示すべきです。しかし、ここでは証拠の不確かさを自ら示すような動きが伴っており、説得力を欠いています。

今回の首脳会談におけるトランプ大統領の態度・発言・非言語的表現を総合的に見ると、彼の戦略は「事実をもとにした議論」ではなく、「印象操作によって相手と観衆を心理的にコントロールする」ことに主眼が置かれていたと考えられます。

事実の裏付けよりも、「何かが起きている」という感情を視聴者に抱かせる。そのために用いられるのは、時に曖昧な映像や紙の束、そして大げさな言動です。トランプ氏のディール戦略は、交渉や討論ではなく、“演出された物語”による心理的優位の獲得だと考えられます。

清水 建二 株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役

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しみず けんじ / Kenji Shimizu

1982年、東京生まれ。防衛省研修講師。特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問。日本顔学会会員。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社がある。

公式サイト:https://microexpressions.jp/
 

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