「そこまで言うなら、材料の残り分だけね」 お荷物商品で一度終売した「ブラックサンダー」。《50円以下チョコ》市場で王者になれた深い経緯

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そして2008年、北京オリンピックに出場した体操・内村航平選手が「ブラックサンダーが大好物」「現地に持っていく」と公言。商品の知名度向上だけでなく、たった30円のブラックサンダー(当時)が、銀メダルを2個も獲得したアスリートすら満足させる「オトナの糖分補給アイテム」であることに、多くの人々が気づいたのだ。

この頃には、コンビニの「ついで買い」誘発アイテムとしてレジ横でブラックサンダーを見かけるようになる。それまで同ポジションにあったチロルチョコより大人の購入を誘導できて、かつ単価を獲れるとあっては、販売店としても目立つ場所に置かざるを得ない。

バレンタインをめぐる販促施策で一気にバズる

B級バレンタイン未来博
2023年のバレンタイン向け販促「B級バレンタイン未来博」。恋人同士以外、あらゆるシーンにバレンタインを開放した(有楽製菓プレスリリースより)

そして2013年、就任したばかりの河合辰信取締役(2018年に社長就任)が手掛けた「ブラックバレンタイン」が、とてつもない大当たりを記録した。

河合取締役の就任当時、売り上げは12月がピークで、2月に売り上げの変化はなかったという。「チョコ菓子メーカーの最大の商機であるバレンタイン商戦で、なぜ有楽製菓だけ売れていないのか?」という疑問に始まり、駄菓子価格のブラックサンダーを、チョコの中でも「渡しても本命と勘違いされない、でも美味しい」ポジションにあると設定。

たまたま飛び込みで営業に来た広告会社からの「一目で義理とわかるチョコ」というコンセプト提案に全力で乗り、地下鉄駅での巨大広告掲示や、自動販売機「義理チョコマシーン」などを展開した。

もともとSNSと相性の良かったブラックサンダーが、「義理チョコ」というフックで“大バズり”と実販の獲得に成功した。就任前はシスコシステムズでシステム畑を歩んできた河合社長が商機をつかめたのは「チョコ市場におけるブラックサンダーの立ち位置を掴み、振り切って行動した」こと。運も味方したとはいえ、マーケティングの勝利といっていいだろう。

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