「そこまで言うなら、材料の残り分だけね」 お荷物商品で一度終売した「ブラックサンダー」。《50円以下チョコ》市場で王者になれた深い経緯
このキャンペーン以降、2025年には「金額で前年比31.6%増、数量で同26.7%増」を記録するなど、バレンタイン商戦でしっかり爪痕を残すようになった。
かつ、義理チョコ戦略は「いいオトナが駄菓子を、ブラックサンダーを食べていいんだ!」という肯定にも繋がり、オフィスやデスクの引き出しの中などで、当たり前のようにブラックサンダーを見かけるようになった。
ラーメンは「1000円の壁」小物チョコは「50円の壁」?3強の戦略

いま、小物チョコに限らず製菓会社は、原料となるカカオ豆や、包装紙の高騰で「高くなったモノを高くなったモノで包んで売る」状態に陥っている。各社の対策は「値上げ」「容量減」に分かれるが、50円以下の小物チョコでコストを価格に転嫁すると「安価だから」と支持していた顧客層・ファン層を失いかねない。
苦しい環境の中で、2022年にチロルチョコが「20円→23円」へ値上げ、その後も値上げや「ごえんがあるよ」などの容量減が実施されている。チロルチョコ・松尾裕二社長は値上げ当時のインタビューで「来年あたりの値上げを考えていたが、「遅い気がする』と感じて決断した」と答えており、コストの高騰が抗えないスピードであることをうかがわせる。

ブラックサンダーも、2023年3月には「30円→35円」2024年9月には「35円→40円」と、相次いで値上げを余儀なくされ、ミニバー・ひとくちサイズも、価格を据え置いたまま容量減に踏み切った。しかし消費者は「今までよく頑張った」「値上げも仕方ない」といった反応が大半であった。
ブラックサンダーは発売から30年近く「30円」という価格を維持しており、カカオ産地で問題となっている児童労働に配慮した「スマイルカカオ」使用(2024年に全商品で100%達成)などの取り組みも、価格に転嫁せず行ってきた。長年の価格へのこだわりや社会的な取り組みなど、「企業として意外と真面目だな?」と思わせるストーリーが見えたからこそ、値上げへの逆風が和らいだといえるだろう。

一方でセコイヤチョコレートは、1976年の発売以来・初となるフルモデルチェンジを実施。これまでのウエハースからパフ・焙煎アーモンドへの変更や、高級感があるパッケージで、長らく踏みとどまった50円以下の価格帯から脱出した(希望小売価格54円)。
いまのフルタ製菓は「チョコエッグ」や、プリキュアシリーズ・クレヨンしんちゃんなどのお菓子が主力で、長らくフルタを支えたセコイヤチョコレートの構成比は、さほど高くないという。リニューアルは、商品力をワンランク上げたうえで、競争が激しい「50円以下・小物チョコ市場」から脱出するという、生き残りを懸けた真っ向勝負の戦略といえるだろう。
今後も原材料・製造のコスト上昇は続き、いずれブラックサンダーもチロルチョコも、50円以下をキープできなくなるかもしれない。低価格の消耗戦になる前に消費者を納得させる、「値上げは仕方ない」というストーリーや、バリエーション豊かな商品提供は、ことさら必要とされるだろう。
たったひと口で消費者の幸せを呼ぶ「小物チョコ」市場での各社の動向から、目が離せない。
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