「ナウシカ」も「ファイナルファンタジー」も! 尾上菊五郎が挑戦する新作歌舞伎のかたち。襲名後も「人生が豊かになる作品を作りたい」

【前の記事】親子同時襲名「尾上菊五郎」が11歳の息子「菊之助」へ伝えたい言葉。歌舞伎役者として生きる《宿命》、親子で乗り越える葛藤の日々
古典に繫がる新作歌舞伎
私は古典歌舞伎と新作歌舞伎を別物だとは捉えていません。古典も江戸時代は新作だったと言われるように、代々の歌舞伎役者たちによって名作に練り上げられて古典になる。
最近特に思うのですが、古典で主題となっている日本人が大事にしてきた心というもの、時代物で言えば〝親子は一世、夫婦は二世、主従は三世〞というような忠義、世話物だったら困っている人を助ける人情、それらを現代にわかりやすく伝えることが新作歌舞伎の意義ではないかと。
歌舞伎の派手な演出を抽出するだけではなく、古典に流れる人を思いやる心、人生が豊かになるヒントが込められた新作を作りたいと常に思っています。
新作歌舞伎への第一歩は、御園座での『児雷也豪傑譚話(じらいやごうけつものがたり)』(2004年4月)です。復活狂言ですが、演出の父の許、何度も打ち合わせを重ねて(尾上)松緑さんや皆さんと芝居を作っていった過程が、私にとっての出発点なのです。
その頃、新作を作って歌舞伎を盛り上げていらっしゃった(十八代目中村)勘三郎のおにいさんの影響も受けています。そして色々な題材を探すなかで、『NINAGAWA 十二夜』に挑んだ。
ちょうどその2カ月前に、勘三郎さんが襲名披露公演で『野田版 研辰(とぎたつ)の討たれ』を上演なさったのですが、野田秀樹さんや皆さんと稽古場で車座になって芝居づくりをしている姿を見て、「すごいですね」と感嘆していたら、「何言ってんだよ、次はお前がやるんだよ」と言われたことをよく覚えています。
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