アメリカには「コスパの悪い大学」が多すぎる 「割に合わない大学」が2割超もある

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このため、新たな教育モデルの必要性が高まっており、変革には連邦政府が重要な役割を果たす見込みだ。保守的な懐疑論者は、高等教育は連邦政府ではなく各州の問題だと主張するが、連邦政府は学生への保証ローンや助成金を提供して支出の大部分を担っているのだ。

公立・私立を問わず高等教育機関は、連邦政府から非常に高水準の支援を受けているが、財政規律が働いていない。一方で、多くの州は高等教育への公共支出を大幅に削減し、授業料を引き上げることで帳尻を合わせようとしている。

大学スコアカードでの公平な評価のため、各種の目標数値が設定される。教育機会拡大や卒業率アップ、学生の生涯賃金改善に向けた試みを新たに行った州には、連邦政府が助成金を出すことになる。大統領候補のヒラリー・クリントンが提唱する高等教育改革案には、こうした進歩的な取り組みが盛り込まれている。

宝くじ活用で授業料無料に

多くの高等教育機関がすでに新モデルをテストしている。アリゾナ州立大学はオンライン技術の活用で卒業までの学費を5.6万ドルに圧縮した。08年では6.8万ドルだった。昨年にはスターバックスと提携して、同社の従業員が無料のオンライン授業で学位を修了できるようにした。全体的な卒業率は33%から49%に改善された。

これに並ぶ成功例としては、19の州知事が設立した非営利のオンライン教育機関ウェスタン・ガバナーズ大学は全米に5.8万人の学生がおり、教員養成から看護、ビジネス分野に至る学位の認定プログラムを提供している。教科書などを含む年間授業料は約6000ドルだ。

また、テネシー州は、高校の卒業生を対象とするコミュニティカレッジ授業料を無料にするプログラムを提供して、全米の注目を集めた。無料化の財源には州の宝くじを充てている。オバマ大統領は、テネシー州をヒントにして、コミュニティカレッジの全米無料化案を考えたと述べている。

連邦政府は、21世紀に合った教育システム構築の戦略を定めるとともに、新たなモデルを推し進めていくべきだ。

 (週刊東洋経済10月17日号

ローラ・タイソン 米大統領経済諮問委員会元委員長

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Laura Tyson

米カリフォルニア大学バークリー校教授。ロック・クリーク・グループのシニアアドバイザー。

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