生成AI時代の作品性確立に一歩。アドビが無償公開したコンテンシャル技術は、クリエイターの権利と透明性を守る「デジタル署名」

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多数のイリーガルコンテンツを生み出したテクノロジイノベーションとしては、かつて音楽産業を破壊的状況に追いやったMP3とNapsterの登場が思い浮かぶ。

このイノベーションの結果、物理的な音楽パッケージは失われ、違法な音楽共有が急増したが、合法的なiTunesによる音楽ダウンロードが普及し、最終的にSpotifyなどの配信サービスに至って、産業の形こそ変化したものの合法的な新しい音楽エコシステムが形成された。

画像生成AIによるデジタルコンテンツの急増は混乱をもたらしているが、コンテンツクレデンシャルのような透明性技術の普及は、新しいクリエイターエコノミーを形作るうえでの大きな一歩になるだろう。

あなたが今日からできること

ACAアプリはまだベータ版の扱いだが、ウェブ上で無料で誰もが利用できる。

また同じくベータ版扱いだが、PhotoshopやLightroomといったアドビのクリエイターツールにはデジタルクレデンシャルを自動付与する機能が組み込まれており、近い将来はCreative Cloud全体のシステムに統合され、あらゆるクリエイティブツールで、クレデンシャルの付与と編集履歴の記録に対応する。

またAdobe Frescoには”手書きの作品である”ことを示すクレデンシャルが付与される機能が、すでに組み込まれているという。

かつて画家が自らのキャンバスに署名したように、デジタルクリエイターが自らの作品に最新技術の「署名」を行える時代ということだ。デジタルコンテンツをめぐる権利関係と価値の流れは、まだ移ろいやすい状況だ。
しかし、混沌としたデジタルコンテンツの海に、秩序と透明性をもたらすには、まずこの仕組みを知ったうえで”使い始める”ことに大きな意味がある。

PhotoshopやLoghtroomにはデジタルクレデンシャル埋め込み機能がベータ版で用意されている(筆者撮影)

かつて画家が自らのキャンバスに署名したように、デジタルクリエイターが自らの作品に最新技術の「署名」を行える時代ということだ。しかも現代ではクラウドに署名が記録されるため、”サインを消す”行為にも対応できる。

アドビのACAアプリでは、デジタルクレデンシャルが付与されていない画像であっても、類似する画像を探し出し、クレデンシャルを確認する機能がある。クラウドサービスの活用が当たり前となった現代ならではの仕組みと言える。

もっとも、デジタルコンテンツをめぐる権利関係と価値の流れは、まだ移ろいやすい。まだまだ、仕組みが完成するまでには時間がかかるだろう。しかし、混沌としたデジタルコンテンツの海に、秩序と透明性をもたらすには、まずこの仕組みを知ったうえで”使い始める”ことに大きな意味がある。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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