生成AI時代の作品性確立に一歩。アドビが無償公開したコンテンシャル技術は、クリエイターの権利と透明性を守る「デジタル署名」

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その中にはアドビのようなデジタルクリエイティブツールのベンダーだけではなく、カメラメーカーに、SNSサービス事業者なども含まれる。単にアドビがアプリをリリースした、というだけではなく、デジタルクリエイションのエコシステム全体をめぐる大きな動きの中のひとつだ。

アドビが公開したデジタルクレデンシャルのツール。クレデンシャルの付与のほか、内容の確認、履歴追跡なども行える。Chrome向け拡張も用意され、ブラウザ内で表示する画像も確認可能だ(筆者撮影)

クリエイターの未来を変える3つのカギ

では、このデジタルクレデンシャルの広がりで、どのようにクリエイターの活動は変化するのだろうか?

注目すべき3つの機能について説明しよう。

1. 作品の「旅路」を透明化する

誰が描いたイラストなのか。誰が撮影した写真なのか。これらを作品が生まれた瞬間から記録し、その後、誰がどのように編集し、そしてどこで公開されたのか。デジタルコンテンツは生み出された瞬間だけではなく、その後の”旅路”によってさまざまな形でエンドユーザーに届く。

コンテンツクレデンシャルはこうした作品の「旅路」、すなわち履歴を明確に記録する機能がある。

例えば、あなたが撮影した美しい夕焼けの写真がSNSで拡散され、やがて商業利用されたとしても、撮影に使ったスマートフォンにあなたのクレデンシャルが登録されていれば、そのことを証明することが可能だ。

また、誰かが無断で編集した場合もオリジナルとの違いが明確になるだけではなく、チームで作品を生み出している場合に、どのように改変・編集が行われるかも明確だ。

プロのクリエイターだけでなく、日常的に写真や動画を撮影する私たち全員に関わる変化になるだろう。
作品の出自が明確になり、適切に評価される可能性を高める第一歩になる。

2. AIとの新しい関係を築く

「自分の作品をAIに学習させてもいいか?」

この問いへの答えは人それぞれだろう。中には「学習に使われるなら対価が欲しい」と考える人もいれば、「学習には使わないでほしい」という人もいるはずだ。あるいは、学習されることを歓迎し、自分自身のタッチ、作風が普遍的に社会に浸透することを望むクリエイターもいるかもしれない。

コンテンツクレデンシャルは、こうした多様な意思表示を標準化する手段となる。

ウェブサイトのロボット検索を制御する「robots.txt」をさらに厳格に規格化したうえで、AI学習に応用したものとも言えるかもしれない。

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