JR西日本株を自治体が「1億円分購入」その狙いは? 岡山県真庭市の太田市長に直撃インタビュー

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――倉吉側は廃止となった倉吉線の旧打吹駅が倉吉市の中心部にあり、山陰本線の倉吉駅は中心部から4kmほど離れているので、これ(打吹駅の廃駅、倉吉線の廃線)はもったいなかったと感じています。倉吉発着の特急があるので、市中心部の駅に発着させたほうが、利便性が上がります。

こうしたことなども含めて南勝線については、政治力がもう少しあれば、宮福線のように開業し、蒜山高原への観光アクセス路線や、倉吉市中心部への直結路線として大きな役割を果たすことになっていたと感じています。

――真庭市と同じくJR西日本の株式を取得した京都府亀岡市では、ほかの沿線自治体にも株式の取得を訴えかけると言いますが、真庭市ではそうした動きは考えていないのでしょうか。

実は亀岡市の桂川市長は、私が京都府庁時代に京都府議会議員を務めており、そのときからお互いよく知っています。亀岡市でのJR西日本株式の取得については、亀岡市の事務方や桂川市長からも真庭市に問い合わせがあり、鉄道の重要性については同じであることから、全国の自治体に呼びかけていこうという話をしています。

先日、全国市長会の役員会の際には、亀岡市の桂川市長から300人近くの市長にJR株式の取得を呼びかけており、これからも連携をしていきます。

わずかな赤字を理由に路線を廃止してはいけない

――国鉄分割民営化から40年近くが経った現状についてどのように感じていますか。

日本の鉄道網は、明治以降、国民の資産を入れて整備されてきました。JRグループは国民の資産を入れて作った鉄道網の維持を前提に作った会社であるはずなのに、現在は、そうした国民の資産を民間会社に抜き取られた形になっていると感じています。

真庭市内にある6駅については市で管理しており、駅を新しくしたり、ウォシュレットのトイレを整備したりするなど、限られた予算をやりくりしながら改善を行っています。一方で、都市部の駅ではこうしたトイレの整備やバリアフリー化についてはJRが自前でやっていることから、不平等であるとともに不合理さがあります。

姫新線にしても、現状の本数では乗りたい時間に乗れないなど不便な側面は否めず、不便だから利用者が減り、利用者が減るからさらに本数が減るという悪循環に陥っていますが、兵庫県側で利用者のV字回復を果たしたように、やり方次第ではかなり変わると思っています。

芸備線で営業係数ワーストワンとされている備後落合駅と東城駅の区間の赤字額については年間でせいぜい2億円程度です。もともと、国鉄分割民営化の際にJR西日本は、京阪神地区の鉄道や不動産収入などを活用して、内部補助で全路線を維持できるように制度設計されました。JR西日本は、2024年3月期決算で約1600億円の経常利益を上げており、安定的な経営ができている中で、わずかな赤字額を理由に鉄道ネットワークを分断することはよくないですね。

また、JRは素晴らしい技術を持っていますが、こうした技術が分割民営化によって各社に分散してしまっているのももったいないですね。ドイツでは標準軌の水素列車が営業運転されていますが、日本でもJRで合弁会社を作るなどしてJRグループの総力を挙げて狭軌の水素列車を開発すれば、狭軌鉄道が多い東南アジアに輸出できるのではないでしょうか。

――JR西日本の株主総会ではどのようなことを発言するのでしょうか。

6月の株主総会に出席して発言をすることが効果的であるのかどうか、判断を熟考しているところです。

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櫛田 泉 経済ジャーナリスト

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くしだ・せん / Sen Kushida

くしだ・せん●1981年北海道生まれ。札幌光星高等学校、小樽商科大学商学部卒、同大学院商学研究科経営管理修士(MBA)コース修了。大手IT会社の新規事業開発部を経て、北海道岩内町のブランド茶漬け「伝統の漁師めし・岩内鰊和次郎」をプロデュース。現在、合同会社いわない前浜市場CEOを務める。BSフジサンデ―ドキュメンタリー「今こそ鉄路を活かせ!地方創生への再出発」番組監修。

 

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