JR西日本株を自治体が「1億円分購入」その狙いは? 岡山県真庭市の太田市長に直撃インタビュー

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――真庭市にとっての姫新線の価値をどのように考えているのでしょうか。

姫新線の津山―中国勝山間が鉄道省作備線として開業してから2025年3月15日で100周年を迎えました。3月16日には真庭市内の中国勝山駅で祝賀イベントを行っています。開業当時は、旅客輸送と貨物輸送の両方で大きな役割があり、人と物流の大動脈という役割がありました。

真庭市は2005年3月31日に9町村が新設合併して誕生しましたが、この地域ではもともとは木炭や製材に加えて牛の生産が盛んでした。プロパンガスが普及するまでは木炭の需要が、農業用の機械が普及するまでは農耕用の牛の需要も旺盛で、現在、真庭市役所のある場所には、江戸時代からの牛市があり、こうした物資を鉄道輸送していました。丸太をそのまま積む貨車があったことも覚えています。

しかし、現在の姫新線は旅客列車のみの運行で、さらに自家用車の普及で乗客が減り赤字。存在意義が弱くなっているのは事実です。また、鉄道の維持が大変というものわかります。

とは言っても、市民生活を考える上では、鉄道はバスに比べて定時運行ができること、高校生や高齢者など交通弱者にとっては重要な移動手段であること。まちづくりの観点からも、鉄道自体に存在感があること。さらに、ローカル線でゆっくりと旅をする文化があるなどの価値もあると考えています。

また、鉄道が廃止されれば、街の中に雑草に覆われた細長い土地が放置されることになります。こうした土地は、道路などへの転換も難しく都市景観上も好ましくないです。雑草や害虫駆除をどうするのかという問題も生じます。しかし、JRはそうした廃線後の問題については意識をしていないようにも思えます。

太田昇(おおた・のぼる)⚫︎ 1951年岡山県真庭郡久世町(現真庭市)出身。岡山県立津山高等学校を経て、京都大学法学部卒業。京都府庁に入庁し、2010年京都府副知事就任。2013年に真庭市長に初当選し、現在4期目(写真:真庭市)

鉄道は道路にない役割がある

――太田市長は鉄道ネットワークの重要性という観点からも姫新線の価値を訴えられていると聞きました。真庭市には中国自動車道もありますが、なぜ鉄道ネットワークが重要になるのでしょうか。

京都府庁時代にJR西日本から優秀な職員を京都府に出向させていただき奈良線の複線化事業などをやっていました。また、私自身、JR西日本の関連会社である京都駅ビル開発の取締役もやっていました。こうした経験から、JR西日本には、山陽新幹線があるので新幹線の利用に直接結びつかない路線はいらないという考えがあることを知っています。

しかし、鉄道の定時性や大量輸送ができるという点では道路とは役割が大きく異なります。南海トラフ地震があったときの代替ルートとしても姫新線が生きてくると考えています。阪神大震災の際に山陽本線が不通となったときには、兵庫県では実際に加古川線や播但線が代替ルートとして機能しています。

また、ロシア軍によるウクライナ侵攻では、鉄道網の重要性が明らかになりました。ウクライナでは、日本の1.6倍ほどの国土に総延長2万kmを超える鉄道網が網の目のように張り巡らされ、鉄道がウクライナ国民の重要な避難ルートや軍事物資の補給路として機能しています。

なぜ、効率的に戦車を輸送できるのか。鉄道ネットワークを考える上では、そうした視点も重要になると考えています。鉄道をいったん廃止にしてしまうと復活が難しい現実があるので、鉄道網は維持したほうがよいと考えています。

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