悲願のW杯優勝へ、「サッカー王国」清水復活の先に見据える"知将"反町康治の挑戦

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こういった人間教育はこれまでのJリーグに少し欠けていた部分だ。J2・水戸ホーリーホックでは2018年から選手教育プログラム「Make Value Project」をスタートさせ、1回90〜120分間の研修を年間20〜30回は実施しているというが、そういうクラブはまだまだ少ない。

清水も人間的成長を促しつつ、選手として成功できるように仕向けていくことが重要だと判断。18歳前後の若手を心身両面から成熟させていく構えだ。

ユースから昇格した西原源樹(写真:清水エスパルス提供)

それと同時に、クラブとしては、スカウト体制の充実も図っていくつもりだ。というのも、近年は清水が高卒・大卒新人の獲得競争に参戦した際、J1タイトル獲得回数の多い川崎フロンターレなどに優秀な人材が流れてしまい、トップ選手を取れなくなっている現実があるからだという。

静岡出身者を中心としたチームでJ1タイトルを

「トップチームが強いとアカデミーも潤うというのは現実にあると思います。顕著な例が川崎で、2017年以降、トップが4度のJ1制覇を果たすと、U-18も2021年のJFAプリンスリーグ関東で優勝。2022年から最高峰のJFAプレミアリーグ・イースト昇格を果たしています。

そういった流れの中から、アカデミー出身の板倉滉(ドイツ1部・ボルシアMG)、三笘薫(イングランド1部・ブライトン)、田中碧(イングランド2部・リーズ)が欧州に行き、日本代表の主軸になった。高井幸大や大関友翔のような次世代を担うタレントも出てきています。この成功例を見て、多くの少年たちや高卒・大卒の選手が『川崎に行きたい』と考えるのもうなずけます」

反町GMはこの10年間で生じた格差をしっかりと認識したうえで、清水の地位向上を促していく考えだ。

清水のスカウトは目下、トップチーム担当が2人、ユース担当が1人という陣容だが、ジュニアユースの選手の外部からの獲得も視野に入れてスカウトの人員増強を講じていく必要があるだろう。

とくにジュニアユースのスカウトに関しては、地元・静岡の選手を中心に獲得できるように手厚くアプローチしていくことが肝心。トップに関しては、ビッグクラブである川崎や浦和レッズ、鹿島アントラーズらが乗り出す前に有望選手にアプローチをかけ、1本釣りする努力を払わなければならないだろう。今年の嶋本の獲得はまさにそれが奏功した例といえるだろう。

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