トランプ政権の大学攻撃の本質と大学の矜持(下)受けて立つハーバード大学を支えるのは大学基金7兆円超の運用益

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ハーバード大学は、政権が示した補助金など90億ドルの凍結解除の条件をすべてはねつけた(写真:Sophie Park/Bloomberg)
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司法省、教育省、保健福祉省からなる「反ユダヤ主義と戦うタスクフォース(以下タスクフォース)」は、3月10日、60大学を対象に差別に関する調査を行った。そして最終的にエリート大学と言われる10大学に絞り、ユダヤ系に対する差別の廃止を求め、要請に応じない場合、助成金や政府との契約を打ち切ると脅しをかけている。

もともと保守派は、政府の大学への助成金提供は義務ではないと考えている。トランプ政権に至っては助成金を税金を原資とする投資とみなしている。投資である以上、政府が大学のパフォーマンスに介入するのは当然という論法だ。大学の独立や学問の自由という概念は、そこには存在しない。そもそも保守派は、大学の使命は科学を進歩させ、人類に貢献することだというリベラル派の主張に懐疑的だ。彼らにとって、イデオロギーのほうがより重要なのである。

保守派の最大の標的、ハーバード大学

打ち切るとされている金額は主な大学別に次の通りだ。

・ペンシルベニア大学  1億7500万ドル
・コロンビア大学    4億ドル(政権の要請に応じたため解除)
・ブラウン大学     5億1000万ドル
・ノースウエスタン大学 7億9000万ドル
・コーネル大学     10億ドル
・ハーバード大学    90億ドル

これまでに公表されている助成金停止の総額は120億ドルを超え、約75%をハーバード大学が占めている。

トランプ政権の大学攻撃の狙いは「リベラル派に偏り、リベラルな人材を養成する機関になっている」エリート大学への支配力を強めることにある。コロンビア大学と並ぶリベラル派の代表格がハーバード大学で、事実2022年7月に『Crimson』誌が行った調査では、ハーバード大学の教員の80%が「自分はリベラルである」と答えている。

保守派が特に問題にしてきたのは、入試における黒人、女性など構造的差別により不利益を被ってきた人々を優遇するアファーマティブアクションで、白人だけでなく、ユダヤ系やアジア系も逆差別を受けているという理由で繰り返しハーバード大学を提訴してきた。保守系判事が多数となった最高裁は、2023年6月にハーバード大学に対して入試でアファーマティブアクションを採用するのは違憲であるという判決を下した。保守派にとっては大きな前進だ。

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