不毛なトランプ関税による混乱や政府職員削減で大混乱、いよいよアメリカの景気後退懸念が高まってきた

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

景気後退入りを予想していたゴールドマン・サックスは9日、トランプ大統領が相互関税についての一部停止措置などを行ったことから、「今後1年間以内にアメリカがリセッション入りする確率は45%」と、従来の予想に戻しているとはいうものの、人々は疑心暗鬼だ。果たしてアメリカ経済は今年中にリセッションに陥るのだろうか。

もちろん、それには一連の強硬な関税政策が今後どうなるかにかかっているといえそうだ。トランプ大統領は関税によってアメリカに富を還元させることで、経済が成長するとの信念を曲げていない。

しかしながら、関税が税金である以上、その賦課が経済成長の足かせとなることは不可避だ。かつて増税によって、経済成長が上向いたことはない。関税でインフレ圧力が改めて強まれば、すでに悪化の兆しが見え始めている消費者心理を更に落ち込ませることになり、GDPの7割を占めるとされている個人消費の減速にながることは避けられない。4月11日にミシガン大学が発表した4月の消費者マインド指数は50.8と、市場予想を大幅に下回っただけでなく、1年後の予想インフレ率は6.7%と、3月の5.0%から1.7%ポイントもはね上がり、1981年11月以来、約43年ぶりの高水準となっている。

DOGEによる連邦政府職員の人員整理の影響はこれから

もう一つの懸念材料は、イーロン・マスク氏率いる政府効率化省(DOGE)による連邦政府支出の大幅な削減や、職員の人員整理だ。4月3日に人材派遣大手のチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社が発表した3月のアメリカの企業・政府機関の解雇予定数は、27万5240人と前年同月比の約3倍に急増、2020年7月以来の高水準となった。前月比でも60%増という異常な高水準となった。

27万5240人のうち、約8割の21万6215人が政府部門の予定数であり、DOGEの推進する政策の影響が出ていることは明らかだ。翌4日に発表された3月の雇用統計では、非農業部門の新規雇用数(NFP)は2月比22万8000人増加し、事前予想をやや上回った。だが、これは大手スーパーでストライキを行っていた従業員が職場復帰したことや、政府部門でも、有給休暇中や退職金を受け取っている職員はカウントされないことなどが影響しているとみられる。

相互関税やDOGEによる人員削減の影響は、いよいよ5月に発表される4月雇用統計で明らかになりそうだ。とくに政府部門での雇用大幅削減は、人々の消費行動を抑制するという、直接的影響にとどまらず、政府と契約している民間業者の業績悪化や、連邦政府職員の消費に依存している首都ワシントンDCの小売業者の売り上げの減少など、間接的な影響もかなりの大きさになると見られる。インフレの高止まりと相まって、やはり個人消費の落ち込みにつながる恐れは、かなり高そうだ。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事