増えまくる《訪日観光客》をデータで分析する 「いつから増えたのか」「日本人旅行者とインバウンド旅行者の行き先の違い」

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これらの地域の取組みの一部ですが、香川県は3年に1度「瀬戸内国際芸術祭」を開催し、県の観光HPの多言語化も進んでいます。佐賀県や青森県は海外の人気映画やドラマのロケ地となっています。現状インバウンド旅行者の4割は関西地方を訪れるため、奈良県はその需要を獲得しています。グラフは、47都道府県のどこを見るか、深掘るかのヒントになり、新しい気づきを得るきっかけをくれます。

もう1つ、黄色の地域だけ抽出すると右上がりの傾向がありそうですね。推測の範囲を超えませんが、肌感覚としては、9年の期間でインバウンド旅行者が増えた地域に日本人旅行者の関心も増えて、日本人の成長率も高くなったのではと考えると納得感があります。

一見無相関な散布図の一部に相関があることも

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一見、無相関な散布図の一部に相関がありそうな場所を探すこともポイントです。相関の強弱が分析にとって重要な場合は、性質が似ている(この場合は初期時点の人数が少ない)もので分析することが大事だからです。

統計学をよく使う人は、データのばらつきが大きいと相関が弱くなることが多いので、残念がります。でも、ビッグデータだったり、範囲が大きいデータに対して、線形関係のみを見る相関係数では、そもそも何を見ているのかよくわからないことも多々あります。そんなときに、ある切り口(今回は初期水準)の情報を重ねると、共通の特徴を持つサブサンプルが見つかり、範囲を絞ることで相関関係が見えることがあります。

このアプローチは、回帰分析の説明変数の見つけ方に通じます。回帰分析では、なんだかわからないけれど共通項がありそうな状態のとき、例えば地域分析で地域ごとのダミー変数を使います。でも今回のように、地域の差がより具体的にわかる切り口がグラフから見つかっていると、より適した変数を選択できます。この感覚が腹落ちすると、統計分析がぐっと身近になると思います。

同じことを「表」で表現しようとすると、行数は47都道府県、列数は各年の滞在者数、成長率になります。目で比較するのはなかなか大変で、どんなに工夫してもイメージが湧きにくいという難点があります。その点グラフは、47都道府県全体の様相が見られますし、成長率同士の相関や初期の規模と成長率の関係を見ることもできます。どちらが良いというわけではなく、伝えたいことが最も伝わる手段を使うことが大事です。

小西 葉子 筑波大学システム情報系教授・RIETI上席研究員(特任)

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こにし ようこ / Yoko Konishi

筑波大学システム情報系教授・RIETI上席研究員(特任)
筑波大学システム情報系教授。2003年名古屋大学経済学研究科にて博士号(経済学)を取得後、RIETI上席研究員等を経て現職。専門は計量経済学。統計学の手法を用いて民間ビッグデータの整備・活用を推進し、統計的手法を用いた経済変動や需要・供給の分析、エビデンスに基づく政策立案(EBPM)を研究。

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