増えまくる《訪日観光客》をデータで分析する 「いつから増えたのか」「日本人旅行者とインバウンド旅行者の行き先の違い」
2015年は水準が一段高くなり、近似直線の傾きからそれまでの増え方よりスピードが格段に上がっていることがわかります。2015年は、インバウンド観光市場で構造変化が起こったと言えそうです。なにがあったのかを定性的にみてみましょう。
2015年がインバウンドブームの始まり
2015年は、1月19日から中国人に対するビザ発給要件の緩和がありました。訪日旅行者の4人に1人は中国からという点からみても、2015年を機に訪日需要が高まったと言えます。
また、財務省の発表によると2015年の日本の旅行収支は約1.1兆円で53年ぶりに黒字になり、JNTOによると、2015年の訪日外客数は、前年比47.1%増の1974万人で45年ぶりに訪日旅行者数が出国日本人数(アウトバウンド)を上回りました。つまり、定量的にみても、定性的にみても2015年がブームの開始時といってよいでしょう。
図31の2003〜2014年の近似直線①は、2003〜2014年の訪日旅行者数に対して、2002年を0とし、2014年までの各年との差で説明した回帰直線の結果です。2014年以降は直線①に2002年からの差の年数を当てはめた数字で予測しています。
直線①での2015年の訪日旅行者数を予測すると、1102万人で、実際の1974万人とは倍近く乖離しています。このことからも、2015年はインバウンドブームによる構造変化があったといえそうです。
直線①での2020年予測は、1335万人、直線②では3654万人でした。2019年の実績値が3188万人であることから考えても直線②の値は現実的です。もしも2020年が平時で、オリンピックが開催されていたなら、2012年に立てられた目標4000万人が達成されたのではと予想できます。
しかし、実際は、コロナショックが起こり、2020年は412万人に急激に減少し、2022年までの出入国制限により、当時の政府の見立ても図31の予測も大幅な下方修正が必要なことがわかります。
つまり、線形回帰分析では、急激な構造変化を予測することは不可能に近いことがわかります。また2023年には、コロナ前の2016年程度に急激に訪日旅行者が戻ってきました。この空白の数年を含む直近の2024年までの期間をどうやって分析するのかは、悩ましい問題で知恵が必要です。
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