ホスピス住宅を「刑務所みたい」という患者も。医療法人社団悠翔会 佐々木淳理事長インタビュー

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佐々木 淳(ささき・じゅん)/医療法人社団悠翔会 理事長・医師。1998年筑波大学卒業。東京大学医学部附属病院消化器内科等を経て、2006年に最初の在宅療養支援診療所を開設。08年に法人化
高齢化社会の日本で介護のニーズは高まるばかり。人手や財源が不足する中、住む場所や経済力、どんな施設を選ぶかによって格差が生まれている。『週刊東洋経済』4月19日号の第1特集は「介護 大格差」だ。手厚い看取りの場が、なぜ不正の温床になってしまったのか。在宅診療医で、ホスピス住宅を利用する患者の主治医も務める佐々木淳医師の話をまとめた。
週刊東洋経済 2025年4/19号[雑誌]
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ホスピス住宅の利用者の主治医をしてきたこともあり、大手の不正に対しては「そんなものだろう」と驚きはない。

ホスピス住宅での訪問看護の指示を出すのは主治医だという立て付けになっているが、「がんの終末期なので痛みに対してこまやかなケアをしてほしい」「褥瘡(じょくそう)(床ずれ)ができやすいから注意を」といった指示をすることはあっても、週に何回、何人で訪問せよ、といった具体的指示をすることはない。

在宅医療を19年やっているが、パーキンソン病患者の自宅へ訪問看護を依頼しても診療報酬の総額は1カ月5万〜10万円が常識的な範囲。自宅で急変したケースを除けば、30万円を超えたら「事件」だ。だが患者がホスピス住宅に入ると、皆単価が高くなる。

あるホスピス住宅にいた自分の患者に話を聞くと、「看護師さんは時々顔を見に来てくれます」という。一方、利用者を食堂へ連れていく、配膳や食事介助といったヘルパーのような仕事を看護師がしていた。その患者の診療報酬の請求額は月55万円。何に対して点数がついていたのか。

高額な医療費に対してケアの質が低い

高額な医療費がかかっていても患者は気づきにくい。指定難病の患者は医療費の助成制度があり、その患者の場合も1万2000円ほどに抑えられていた。

問題は、高額な医療費に対してケアの質が低いこと。自立支援より医療的な管理が優先されるホスピス住宅は多く、患者からすれば「退院したらまた病院のようなところに戻された」という感覚だ。手足を拘束する施設もあり、「刑務所みたい」という人も。1人にここまで医療費をかけるなら、ちゃんとした緩和ケア病棟が運営できる。社会保障財源が限られる中、こういうお金の使い方はまずい。

今後の方向性はおそらく2つ。1つはホスピス住宅の施設類型を切り替え、訪問1回ごとに報酬をつけるのではなく、介護付き有料老人ホームのような包括払いにすること。そのほうが看護師の実際の働き方にも合う。もう1つは集合住宅型の訪問看護に大幅な減算をかけることだ。2026年度には診療報酬の改定がある。何らかの調整が入るだろう。

(構成:印南志帆)

本記事はダイジェスト版です。詳報記事は「東洋経済オンライン」のサイト上でご覧いただけます。

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