なぜ現代人の読解力は低下しているのか?「ちゃんと読めない・聞けない人」が急増する”7つの要因”

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一方、認知機能が低ければ、(自分勝手な解釈を含め)ある特定の見方に限定してしまうため、正確な状況把握ができなくなってしまいます。

加齢や病気によるものを除くと、認知機能の低下には、複数の要因が絡み合っています。

スマホの長時間使用、不規則な生活や過度なストレス状態、(マルチタスクの影響などで)ひとつの物事に集中して取り組む時間の減少、(テクノロジーの発達などで)「情報を受信し→処理し→理解し→活用する」という認知プロセスを踏む機会の減少などなど。

読解力を高めることは、衰えつつある認知機能を高めることでもあるのです。

⑤個人が書くチャット&SNSの文章に触れる機会の増加

普段あなたがよく読んでいるのは、チャットやSNSの文章ではないでしょうか。

残念ながら、一般の人が書くチャットやSNSの文章は、言葉としてまとまりのないものが少なくありません。略語やスラングも多く、おかしな論理や文法、真偽が不確かな情報なども散見されます。

チャットでは、雰囲気頼りの絵文字やスタンプも多用されています。また、SNS上の文章の場合、その物事に隠れている背景や前提などが抜け落ちていることが多く、大きな文脈を読み解く機会がありません。

「なんなん、◯◯の主人公スパダリきしょ。メンブレの身には無理ゲーすぎたwww」などというつぶやきを受動的な態度で読み続けることは、読解力アップの対極にある行為とも言えます。

⑥世代間コミュニケーションの減少

核家族化が進む中、異なる世代とコミュニケーションを図る機会が減りました。

たとえば、お年寄りがいる家庭では、お年寄りと話す際に、相手に伝わる言葉を使おうと工夫するほか、お年寄りの話を聞くときは、その言葉を理解しようと、一所懸命に耳を傾けるでしょう。

自宅に固定電話を持つことが主流だった時代には、家族への〈電話の取り次ぎ〉もありました。あれなども、突発的に世代を超えて人と会話をする機会だったと言えます。

もちろん、世代が違えば、興味・関心が異なるので、話題も違います。

世代を超えて行われるコミュニケーションというのは、同世代とのやり取りには登場しない言葉や情報、価値観などに触れる絶好の機会でもあるのです。

世代間のコミュニケーションが減少し、今まで日常会話の中で自然と行われてきた読解力の鍛錬の機会が減ってきているのです。

⑦アウトプット不足

いくら情報(言葉や知識)をインプットしても、それをまったくアウトプットしなければ、その情報を自分のものにすることはできません。

「書く」「話す」というアウトプットによって、私たちは、その知識や学びを「使える言葉」として自分の血肉にすることができるのです。

借り物ではない「自分の言葉」でアウトプットを

自分の血肉になっていなければ、次回以降、同様の情報を読み解く際に苦戦を強いられます。

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たとえば、SNS上では、流れてきた投稿を「なんとなく良さげだから」とシェアし、物事を読み解いた気になってしまっている人も大勢います。

しかし、残念ながら、それはアウトプットではなく、情報の受け売りにすぎません。

そこからは、文脈を論理的に読み解くプロセスが抜け落ちており、思考力も使われていません(思考停止しながらシェアボタンを押している状態です)。

読解力を高めたいなら、目の前の情報を咀嚼し、自分の頭でその意味や意図について考え、借り物の言葉ではなく「自分の言葉」でアウトプットすることが重要です。

山口 拓朗 伝える力【話す・書く】研究所所長

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やまぐち たくろう / Takuro Yamaguchi

山口拓朗ライティングサロン主宰。出版社で編集者・記者を務めたのちライター&インタビュアーとして独立。27年間で3800件以上の取材・執筆歴がある。現在は執筆や講演、研修を通じて「論理的に伝わる文章の書き方」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「『うまく言葉にできない』がなくなる言語化強化法」など実践的なノウハウを提供。2016年からアクティブフォロワー数400万人の中国企業「行動派」に招聘され、北京ほか6都市で「Super Writer養成講座」を23期開催。『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』(日本実業出版社)など著書多数。

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