日本は衰退「食堂車と車内販売」欧州鉄道最新事情 「昔ながら」の形は減っても食事の提供は堅持
新車導入にともない簡易な調理の食事に切り替わっていくケースも少なくないが、井上氏によるとベルギーの夜行列車運行スタートアップ企業「ヨーロピアンスリーパー」が始めた食堂車の連結が興味深いという。
この食堂車のメニューは、前菜からメイン、デザートまで各コースを4種から選択できるようにしたものだ。「こうした提供方法なら、組み合わせは50〜60種類となり、最小限の食材で最大限の効果が得られる仕組みとして賢いやり方」であり、「欧州では人手不足やコストの低下を『仕組み』で克服している印象」と指摘する。
主流になった「機内食スタイル」
2つ目は、食堂車やビュッフェ車を編成からなくし、乗客各自の座席で本格的な供食サービスを行う例で、航空機内での機内食サービスのようなスタイルだ。
具体例としては、ロンドンからイングランド西部やウェールズ方面への列車を運行するグレート・ウェスタン・レールウェイ(GWR)のインターシティ(IET)がある。1970年代から使われてきた車両「インターシティ125」の後継として導入された日立製「クラス800/802」では、ファーストクラスに豪華なセットメニューが提供される一方、普通車ではワゴンサービスで飲料やスナックを買うことになる。

このようにシートに食事を提供するサービスは、「プルマンスタイル」と呼ばれることもある。「オリエント急行」などのプルマンカーと呼ばれる車両では、乗客が座る席にダイニングテーブルを設置し、市中の高級レストランさながらの高品質な食事や飲料を出す習慣があることによる。
ただ、GWRのように長距離列車から「乗客との対面でサービスする供食設備」を完全に外す例は稀だ。各国を代表する高速列車、たとえばフランスのTGVやイタリアの「フレッチャロッサ」、スペインのAVEなどは、シートでの供食サービスのほかにカウンター形式の軽食提供を中心とするビュッフェ的なスペースも設けているケースがほとんどだ。

無料会員登録はこちら
ログインはこちら