ハクションでご臨終⁉ 花粉の季節は要注意、死に至る危険な「くしゃみ」の真実

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さらに、前触れがないため自分でコントロールすることができず、ほかの行動ができなくなったり、目をつぶったりしてしまいます。

飲み物を持っているときにくしゃみをして、勢いでこぼしてしまった経験はないでしょうか? 飲み物をこぼす程度で済めばいいのですが、高齢者の場合、予期せず生じるくしゃみによって、なんと生命の危険にさらされることがあります。

くしゃみの衝撃で骨が折れる

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1つは、くしゃみによる失神です。

くしゃみの仕方や体勢によっては、首に負担がかかり意識を失うことがあります。これは、首と顎の境目に位置する「頸動脈洞」という部位に、刺激が及ぶためです。「頸動脈洞」には、脳への血流を監視する機能があり、刺激が加わると脳の血流を下げようとして脈を遅くさせます。この反射によって脳血流が低下し、失神してしまうのです。

これが死に直結することはなくとも、失神が原因で転倒や転落、溺水、交通事故などの重大な二次被害につながることがあります。実際に、「運転中のくしゃみによる失神が原因である」と裁判で認定された交通死亡事故もありました。

もう1つの危険性は、肋骨骨折。

くしゃみの負担は、呼吸運動を司る肋骨にかかりやすいので、骨が弱くなっている高齢者は危険です。肋骨は呼吸で大きく動かす骨なので、骨折すると痛みで呼吸が浅くなり、二次的に肺炎や呼吸不全など重篤な合併症を併発する可能性があります。

このように、くしゃみは身体に相当な負荷がかかるのですが、だからといって、くしゃみを無理に止めようとするのはやめましょう。たとえば、口や鼻を手で強く圧迫するようにして覆うなどすると、さらに負荷がかかって、気道の損傷やぎっくり腰などほかの傷病を併発することもあるので、絶対にやってはいけません。

高木 徹也 法医学者

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たかぎ てつや / Tetsuya Takagi

1967年東京都生まれ。杏林大学法医学教室准教授を経て、2016年4月から東北医科薬科大学の教授に就任。高齢者の異状死の特徴、浴槽内死亡事例の病態解明などを研究している。東京都監察医務院非常勤監察医、宮城県警察医会顧問などを兼任し、不審遺体の解剖数は日本1、2を争う。法医学・医療監修を行っているドラマや映画は多数。著書に『なぜ人は砂漠で溺死するのか?』(メディアファクトリー)など。

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