その主張は以下のようなものだ。エネルギー部門を中心とする産業を国有化して、企業や富裕層に増税。医療、福祉、教育分野の予算は削減が中止され、むしろ増やす。労働組合は1980年代のサッチャー改革以前のような勢力を取り戻し、公共部門の労働者が財政支出の主要な受益者となる。
外交面では防衛予算を削減し、核による戦争抑止政策を放棄するという。コービンは世界中のあらゆる矛盾を米国のせいだとしており、ベネズエラの「社会主義革命」を主導した故チャベス大統領のような指導者が出現すれば、すくに飛行機に乗って会いに行くだろう。
コービンは60%近くの票を得て労働党の党首となった。しかし労働党は、彼が党首では総選挙に勝てない。保守党の一部には、コービンの勝利を宝くじにでも当たったように喜ぶ議員がいるが、今回の番狂わせは誰のためにもならない。
現実逃避から目を覚ませ
第一に、コービンが早々に党首の座から降ろされることはない。むしろその逆で、疎外された多くの若い有権者が刺激され、政府に対して声を挙げるかもしれない。
第二に、実行力を持つ責任ある野党がいなければ、政府は傲慢で自分勝手になる可能性がある。
第三に、来年には英国の欧州連合(EU)残留の是非を問う国民投票が実施されるが、労働党の支持母体である労組の幹部にはEUを金持ちクラブと断ずる者がいる。コービンもそうした見方をした場合、EU残留に必要な保守党と労働党の合意が不可能になる。
第四に、コービンの政治的見解はスコットランド国民党と多くの点で一致しているため、英国内でのスコットランドの扱いはさらに難しくなる。
第五に、右からも左からも非合理的な人気取り政策を提唱する勢力に詰め寄られた保守党政権が、優れた価値観と良識を代弁する政府の役割を放棄してしまう危険性がある。しかし、どれほど大衆に求められても国家というものは、全てをあきらめてさじを投げてしまうことはできないのだ。
コービンの勝利は、英国人がいかに現実から目を背けているを、あらためて浮き彫りにした。国民の目を覚まさせ、そうした危険な夢想に終止符を打つのがキャメロン首相の仕事だ。
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