日本では、「ゼレンスキーはこうするべきでなかった、ああすればよかった」、というたぐいの話ばかりである。だが、当地のアメリカでさえ、FOXニュース以外は、「トランプ、ヴァンスの大批判、アメリカは終わり」という議論である。
「平和ボケの議論」をしているのは日本だけ
例えば、アメリカの3大ネットワークの1つCBSのニュースドキュメンタリー番組「60ミニッツ」では、トランプ大統領のロシアのウクライナ侵略に関して、この10日間の誤った発言を列挙し、「ロシアと北朝鮮の陣営にアメリカは加わった」と非難した。
また公共放送PBSの「ニュースアワー」では、イェール大学の歴史学者ティモシー・シュナイダー教授が、そもそもトランプ大統領の執務室での行動について、「ゼレンスキー大統領を侮辱し、よってたかっていじめただけの破廉恥な行為だ」と断罪し、「80年間の欧州という偉大な同盟を捨てて、経済規模でいっても20分の1しかないロシアにパートナーを変えようとしている」と指摘した。
欧州は、さらにはっきりしている。日本のニュースでも、英国のキア・スターマー首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が強力にゼレンスキー大統領を励まし、ウクライナを全面的に支援。ウルズラ・フォンデアライエンEU委員長ももちろん全面支持。英仏が中心となって、欧州は緊急首脳会談を開催した。
実質的にも欧州は即座に動いた。ドイツは、伝統の財政均衡主義を捨ててまで、全力で軍事支出を増やし、ウクライナを支援することを宣言、欧州軍事関連株が大幅上昇する事態となった。
それ以上に重要なのは、欧州の首脳もメディアも国民も、これは「戦後最大の危機」と認識しており、「欧米同盟はもはや終わった、欧州はアメリカ抜き、欧州自身で守らなくてはならない時代に変わった」と覚悟を決めていることだ。金の面でも武力でもアメリカには依存せず、自力でやる方向にすでに舵を切ったのだ。
ドイツを訪問中という岩間陽子・政策研究大学院大学教授は、日本経済新聞に「第2次世界大戦以来未曽有の事態を迎えています」とコメントしている。また、アジアでは、台湾も「有事にアメリカは頼れない」という前提で議論を始めた。「ゼレンスキー大統領の行動は賢くなかった」とソファーに寝そべり評論しているのは、日本という平和ボケで愚かになってしまった国民だけなのだ。
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