【産業天気図・石油】価格転嫁、石化製品好調で改善方向。ただ原油価格の影響大

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新日本石油<5001.東証>など石油精製業界は「曇り」が続いている。最大の要因は、原油高による製品コスト上昇を製品価格に全面転嫁できていないためマージンが低水準にあることだ。また、07年3月期は下期に原油価格が下落したために原油の在庫評価益が大きく減少。新日石の場合、前期1664億円あった在庫評価益は50億円の評価損となる。このため会計上の利益は、前期経常利益3090億円から1850億円に急減する。
 ただし、在庫評価損益を除いた新日石の“真水の利益”は増益になる。これは、低水準とはいえマージンが改善していることと、石油化学製品がアジア向け合繊・合成樹脂原料用に好調で予想以上に市況が良かったこと、そして原油高で原油・天然ガスの開発利益が増えているためだ。特に石化製品の市況好調が“神風”になっている。
 続く08年3月期も会計上の利益は原油価格に左右される。新日石はWTIで65ドルと比較的高めを想定し、在庫評価損益はゼロの見通し。だが価格転嫁が進んで石油精製のマージンが改善し、石化好調と補修費減少で実質的に利益高水準を見込む。
 一方、出光興産<5019.東証>は、原油在庫評価について後入れ先出し法を採用しているため評価損益が出ないが、比較的堅調な利益を計上している。これは石化製品の規模が大きいことと、他社より高付加価値製品が多いためだ。
 結論からいえば、07年度はマージンは低水準だが、原油価格が現状維持程度なら、価格転嫁の浸透で改善方向へ。石化製品は市況変動があるもののトレンドしては好調を持続しており、原油の在庫評価損益を除く真水の利益は、徐々に上向くと見られる。ただ、各社とも石化製品の市況を慎重に見ており、5月の決算発表時には保守的な計画数字を示すと思われる。確かに市況については不透明感が伴うため、『会社四季報』としても、各社の07年度収益については抑制的な予想にとどめている。
【内田通夫記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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