学級崩壊にとどまらず「学校崩壊」はなぜ起こるのか、年度始めの対策は? 「1人の教員」を発端に学校全体へ波及する実態

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「あくまで実感値ですが、コロナ禍以降、『学校崩壊』の事態に直面する学校が増えている印象があります」。そう話すのは、ベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンターで主任研究員を務める庄子寛之氏だ。これまでも「学級崩壊」は学校現場の課題の1つとされてきたが、「学校崩壊」とはいったい何が起きているのか。公立小学校で約20年間にわたり教員を務め、現在は全国各地の学校や教育委員会で研修・講演を行っている庄子氏に、その実態と対策について聞いた。

低学年でも学級崩壊が増え、学校全体に波及

「学校崩壊」とは、いわゆる「学級崩壊」とどのような点が違うのだろうか。庄子氏は次のように説明する。

「『学級崩壊』は、シンプルに言うと1つのクラスが荒れていることを指すのに対し、『学校崩壊』はそれが学校全体に及んでいる状態を指します。学級崩壊の場合は、担任の言うことを聞かなくても隣のクラスの先生や校長の言うことは聞くケースが多いのですが、学校崩壊は誰の言うことも聞かないため、より深刻です」

庄子氏によると、学校崩壊の中身は中学校と小学校で違いが見られるという。

「中学校は教科担任制で、先生が学年で固定されるため、学級崩壊というより『学年崩壊』が起きやすく、そこから学校崩壊につながる傾向があります。生徒間の暴力やいじめ、授業の放棄、先生への反抗、飲酒・喫煙といった生徒の行動に起因することが多く、問題行動を起こす生徒が卒業するまで改善しにくいこともあるのが特徴です。ただ、こうした目立った問題行動はほとんどなくなっており、それよりも不登校のほうが課題となっています。学校崩壊は小学校のほうが深刻だと思います」

庄子 寛之(しょうじ・ひろゆき)
ベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター 主任研究員
公立小学校の教員を20年近く務めた後、現職。大学院にて臨床心理学科を修了し、人をやる気にさせる声かけや環境づくりを専門とする。次世代教育・働き方改革・道徳教育などに関する研修を全国各地で行い、研修回数は500回を超え、受講者も1万5000人以上となる。著書に『学級担任のための残業ゼロの仕事のルール』(明治図書出版)など
(写真:ベネッセ教育総合研究所提供)

小学校においても不登校のほうがより大きな課題ではあるが、中学校に比べて「担任の指導の色」など学校側に起因する学校崩壊が多くなっているように見えるという。例えば、授業中に理由なく歩き回る児童に対して担任が一方的な指導を行うことで、さらなる反抗を招いて学級崩壊が起こり学校全体へ波及していくといった、担任の管理不足やスキル不足に起因するケースが多く見られるそうだ。

複数学年を1人で受け持つ音楽や図工などの専科教員の影響も大きい。庄子氏が見聞きしてきた小学校の学校崩壊の事例としては、専科教員の授業から学級崩壊が始まり、それが複数学年に及んで学校崩壊へと至ったケースがあるという。

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