学級崩壊にとどまらず「学校崩壊」はなぜ起こるのか、年度始めの対策は? 「1人の教員」を発端に学校全体へ波及する実態

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また、保護者に対する発信をこまめに行い、日頃から学校運営への理解を求めておくことも学校崩壊の予防につながるという。

「私は学級通信を活用していましたが、学校での取り組みを保護者に対して“見える化”しておくと、好意的な目で見守ってくれる保護者が増え、大きなクレームにつながりにくくなります。保護者からのクレーム対応は時間的にも精神的にも負荷が大きいため、それを減らすことができれば、子どもたちへの対応に集中しやすくなりますし、早く帰るコツでもあります」

さらに、教員が子どもたちと向き合う時間を増やすには、働き方改革を積極的に進めていく必要もあるという点を庄子氏は強調する。

「教員が書類ではなく子どもを見ることができるようにするためにも、まずは不要な業務を削減することが大切です。そして、働き方改革により捻出した時間を、子どもと向き合う時間に当てたり、研修に当てて教員のスキルアップを図ったりすれば、学校崩壊の予防にもつながるはずです」

新年度の「黄金の3日間」は理想の学級・学校像を明確に

新年度の開始にあたって、学校崩壊を防ぐために注意すべき点はあるのだろうか。庄子氏は、自らの教員時代の経験を踏まえて次のようにアドバイスする。

「4月の学期始めの3日間は『黄金の3日間』とも呼ばれています。この期間は、どういう学級や学校をつくりたいかという理想を語り、子どもたちとの信頼関係を築くことが大切です。これは『教師の立場のほうが上だ』とわからせようとすることではなく、『このクラス、この学校ではこういうことは許さないが、この部分は自由にやってほしい』という規律と自由のバランスを明確に示すということ。その方針は、保護者や地域の人々に向けても発信していく必要があります」

新年度の始まりが慌ただしく過ぎ去った後のことも見据えておきたい。3学期制の場合、各学期の中間の月にあたる6月、11月、2月は、子どもたちが中だるみしやすく、学校崩壊の引き金となる学級崩壊が始まりやすい「魔の月」とよく言われる。

「子どもたちをちゃんと見て、毎日楽しいという状況をいかにつくれるかが、とくに魔の月と呼ばれる時期は重要ではないでしょうか。また、子どもたちは終わりが見えると頑張れることが多いので、6月の初めなら『あと30日、登校したら夏休みだね』というように、終わりから逆算した声かけをすることが中だるみ防止に効果的です。運動会などの大きな行事が終わったタイミングや行事がない月は、1日の中でも『あと2時間で今日の授業は終わりだね』と終わりを意識させると、気持ちが緩みにくくなるように思います」

また、今後の学級経営においては、コロナ禍の休校を経験したことで子どもたちや保護者の価値観が変わっていることを考慮しておくことも重要だと庄子氏は話す。

「休校中は自宅学習に切り替えられたことで、『学校に行かなくても学べる』ということを子どもも保護者も実感しました。コロナ禍以降に不登校が急増しているのも、そうした価値観の変容が無関係ではないと思います。従来どおりの授業を続けるだけでは、子どもや保護者の価値観の変化にうまく対応できなくなり、学校崩壊を引き起こすリスクも高まります。社会は20年前、30年前とは違うのだという認識を持ったうえで、授業内容や指導方法を見直していく視点を持つことも必要だと言えるでしょう」

(文:安永美穂、注記のない写真:ふじよ/PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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